研究実績の概要 |
統合失調症は多因子遺伝病であるが、その遺伝性の複雑性のため原因遺伝子の同定には至っていない。最近のゲノム医学の進歩により、染色体の微小欠損、微小重複が統合失調症に非常に強く関与することが報告された。これらの染色体異常に関与する遺伝子群が統合失調症発症脆弱性に関与する可能性が示唆される。 これらの染色体異常の中で、最も寄与率が高いのが22q11.2領域である。22q11欠損症候群のモデルマウスは統合失調症様行動異常(Prepulse inhibition (PPI)での感覚情報処理異常、MK801等のNMDA受容体阻害剤への感受性亢進、社会行動異常)を示す。22q11欠損領域には、神経発生に関与する遺伝子群(Dgcr8,NgR1, Zdhcc8, Ranbp1)、ドーパミン関連遺伝子群、NMDA受容体関連遺 伝子が存在する。22q11欠損領域に存在する神経発生に関与する遺伝子群の単独KO マウスのいくつかは、統合失調症様行動異常を示すが、その行動異常プロフアイルは22q11欠損症候群と異なることを明らかにしてきた。 今年度は、行動異常に関与が疑われる候補遺伝子を掛け合わせて、ダブルノックアウトマウスを作製し、行動実験や発生学的解析を行い、22q11領域に存在する遺伝子間の相互作用の検討を行った。
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