研究課題/領域番号 |
20K07327
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥田 傑 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50511846)
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研究分担者 |
岡西 広樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70792589) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アミノ酸 / トランスポーター / がん |
研究実績の概要 |
本研究では、がん細胞に存在するアミノ酸感知機構を解明し、その創薬標的としての可能性を探索することを目的とする。がん細胞の成長や増殖に関してアミノ酸が担う役割は非常に大きく、アミノ酸取り込み、およびアミノ酸感知の仕組みを解明することで、抗がん薬の開発などへとつながる可能性が期待できる。がん細胞では、細胞膜に高発現しているアミノ酸トランスポーターLAT1を介して、正常細胞に比べて大量のアミノ酸が取り込まれる。細胞内に取り込まれたアミノ酸は、シグナル因子として細胞成長・増殖を制御するmTORC1を活性化するため、がん細胞の成長は正常細胞よりも速い。細胞内に取り込まれたアミノ酸をシグナル因子として感知し、mTORC1に伝達する役割を担ういくつかのアミノ酸センサーが先行研究により同定されている。これらの因子はアミノ酸によるがん細胞増殖促進機構に深く関与しているため、新たな抗がん薬の標的となることが期待される。本年度は、アミノ酸感知に直接的または間接的に関与する因子がアミノ酸トランスポーターと相互作用するという仮説のもと、前年度に引き続き、がん特異的に高発現し、がん細胞におけるmTORC1活性化の原因因子の1つにも挙げられているアミノ酸トランスポーターLAT1との相互作用因子の解析を行った。また、アミノ酸の有無やLAT1阻害条件下などで細胞内のシグナル変動について解析し、シグナル変動が見られた経路を同定することで、アミノ酸感知に関連する因子の絞り込みを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析計を用いて得られたデータから、がん特異的に高発現するアミノ酸トランスポーターLAT1と相互作用する因子について、およびLAT1を介したアミノ酸取り込みによって影響を受けるシグナル経路についての知見を得ることができた。LAT1との相互作用が確認された多数の因子のなかからアミノ酸センサーを同定するには至っていないが、LAT1を介して取り込まれたアミノ酸による細胞内シグナル変動についてのデータ解析を組み合わせることで、アミノ酸感知に関与する可能性のある候補因子についての知見が得られた。また、LAT1阻害による細胞内のシグナル変動を観察した実験では、細胞内に取り込まれるアミノ酸の減少によって引き起こされるフィードバック機構に関する新たな興味深い結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和4年度は、これまでに得られた知見を組み合わせ、さらに詳細な解析を行うことで、がん細胞におけるアミノ酸感知機構の解明を目指す。これまでに絞り込まれたLAT1相互作用因子のなかから、アミノ酸センサー因子またはそれと相互作用する因子を生化学的な手法により同定し、その機能解析を行う。また、本年度得られた、LAT1を介したアミノ酸シグナルのフィードバック機構に関する興味深い結果についても、さらなる解析を進める。様々な細胞株を用い、生化学的および細胞生物学的手法や動物実験などを組み合わせて詳細な解析を行うことで、その全容解明を目指し、また創薬標的としての可能性について評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も新型コロナの影響もあり、出張の機会が限られ、旅費の出費が抑えられたため、次年度に繰り越す残高が発生した。 異動に伴い試料を保管するフリーザーが必要となったので、繰り越した予算は、次年度にフリーザーを購入する費用とする予定である。
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