研究実績の概要 |
研究代表者は、細胞膜を構成する主要な脂質であるホスファチジルエタノールアミン(PE)と、コレステロールの合成制御機構に注目し解析を進めてきた。コレステロールの誘導体(オキシステロール)は転写因子NF-Yによるヒストンアセチル化を抑制し、PE合成の律速酵素ETおよびコレステロール合成の律速酵素Hmgcrの転写を負に制御することが明らかになった。転写促進因子NF-YはETやHmgcrのプロモーターに結合し、ヒストンアセチル化酵素p300をリクルートする。p300はヒストンをアセチル化し転写を正に制御する。オキシステロールの一種である25-HCはこのp300のリクルート、ヒストンアセチル化を阻害し転写を抑制する。以上の研究成果を踏まえ、p300 とNF-YBの直接の結合や25-HCによる転写因子複合体の変化を確認するための実験を進めた。免疫沈降法(IP)でのp300とNF-YBの直接の結合は確認できなかったため、ET, Hmgcrプロモーター領域に特異的に結合するタンパク質を解析できるDNA pulldown assay法を用いて解析した。25-HCによりET, Hmgcrプロモーター領域へのp300の結合は低下したが、NF-YBの結合は低下しなかった。そのため、DNA pulldown assay法によりETプロモーター領域に結合する転写因子複合体を回収し、nano LC-MS/MSで解析を行っている。また、細胞膜を構成する主要なリン脂質であるPCとPE量の人為的な制御について検討するため、PC合成の律速酵素CTαのKO細胞を作成した。LC-MS/MSを用いて細胞内のリン脂質組成の変化を評価したところ、CTαのKO細胞ではPC、PEともにある特定の分子種が有意に減少した。PC、PEの絶対量も減少する傾向が見られたため、さらなる検討を進めている。
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