研究課題/領域番号 |
20K07333
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
阿部 雄一 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 主任研究員 (30731632)
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研究分担者 |
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
山口 類 愛知県がんセンター(研究所), システム解析学分野, 分野長 (90380675)
松井 佑介 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (90761495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロペプチド / 癌 / 癌特異的抗原 |
研究実績の概要 |
有効な診断・治療法の不足している難治がんでは革新的治療法の開発に向け、既存技術では測定不能な分子種も含有する大規模オミクス情報の整備が急務である。これまでがん変異タンパク質が多数報告されたが、既存の解析プロトコルではその原理上測定できない分子群が存在し、その一例として、Small open reading frame (smORF)から翻訳される「がんマイクロペプチド」が挙げられる。がん培養細胞にて機能制御を行うマイクロペプチドが実証されているものの、臨床検体におけるマイクロペプチド網羅的測定系は未だ不足している。 従って本研究の目的は、臨床検体からの高感度マイクロペプチド分離法、ならびに同定用カスタムイプライン構築であった。Ribosomal Profiling法による発現予測情報が特に整備されているlncRNA由来マイクロペプチドに焦点をあて、培養細胞を用いた解析プロトコルの最適化から、膵がんPatient-derived xenograftによる患者特異的マイクロペプチド同定を試みる。また同時にHLA複合体提示リガンドーム中のマイクロペプチドの提示状況に関するデータも取得し、細胞内マイクロペプチド発現量との相関を検討を予定していた。 2020年度、培養細胞Lysateからのマイクロペプチド分離条件の検討を進めた。分子サイズに依存した還元環境下における沈殿効率の差を利用し、低分子タンパク質の濃縮条件の最適化を行った。現在、濃縮した低分子タンパク質の質量分析計による同定を進めている。 一方、HLAリガンドーム解析について、HLAリガンド同定数の向上を目的とした、測定系のLarge-Scale化を進めた。日本人でメジャーなHLAClass1複合体ハプロタイプを発現している癌細胞8株からHLAリガンドームを取得した結果、最大2500以上のHLAリガンドを同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染拡大の影響により、質量分析計の委託分析がしばしば停止し、マイクロペプチド濃縮条件の検討が遅れている。2021年度の早い段階でマイクロペプチド濃縮条件の最適化に関する諸条件の比較解析を完了させたい。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、既に構築してあるプロテオゲノミクスパイプラインを基盤に、翻訳後修飾の種類を事前に絞り込まないオープンペプチドサーチと、データベースに依存しないDe novoペプチドシーケンスを組み合わせた独自のハイブリッド型スコアリングシステムを構築し、マイクロペプチド同定数の飛躍的向上をねらう。マイクロペプチド同定の検討は、smORF情報が“sORFs.org”で整備されているlncRNA由来マイクロペプチドに絞って実施する。 また細胞Lysateからのマイクロペプチド濃縮プロトコルの最適化を完了させる。現在進行中の質量分析計による同定結果を踏まえ、プロトコルの検討を更に進める。その後、膵がんPDXモデル10~20検体を分担者の田口から取得し、同一検体からプロテオーム/マイクロペプチド/HLAリガンドームを同時測定する。別プロジェクトで得られたエクソーム・RNAデータをカスタムパイプライン上で統合し、患者特異的マイクロペプチドを大規模同定する。抗原提示能予測に必要なHLAハプロタイプは分担者の山口が開発したアルゴリズムで決定する。HLAリガンドにはnetMHCpanによる抗原提示能スコアを付加させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロテオミクス外部受託解析がコロナウイルス感染拡大の影響で遅延しており、それにともない外部受託費ならびに関連消耗品費用を次年度に繰り越したため。
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