研究課題
次世代シーケンサーをの発展とともに15万種超のlncRNA由来マイクロペプチドが予測された一方で、質量分析計で測定されたヒトプロテオームマップでは、同定lncRNA由来マイクロペプチドはわずか9種類だった。マイクロペプチドの分解等の影響を加味しても、これらデータ間の乖離は大きく、実験バイアスによる顕著な同定数低下が示唆された。代表者はこれまでに構築した超高感度プロトコルをマイクロペプチド同定に応用し、内視鏡検体から11種のマイクロペプチドの同定に成功し、その内4種はがん部で有意な発現低下、2種は発現増加を示すことを明らかにした。この結果を踏まえて、これまでに細胞Lysateからの特異的なマイクロペプチド濃縮条件の検討を行ってきた。培養細胞Lysateからのマイクロペプチド分離条件の検討を進め、Micropeptideを含む低分子タンパク質の濃縮条件最適化を行った。現在、質量分析計側の測定条件の最適化を進めている。またHLAリガンドーム解析の前処理については、タンパク質液体クロマトグラフィーの導入を進めた結果、HLAリガンドのさらなる精製・分画に成功し、HLAリガンド測定の高感度化に成功した。HLAリガンドの同定アルゴリズムについては、2021年度に導入したThermoScientific社タンパク質サーチエンジンと、De novo peptide sequencingサーチエンジンを組み合わせる事で、通常のヒトタンパク質アミノ酸にMatchするHLAリガンドを単一細胞株から6500超同定することに成功した。現在、共同研究者とマイクロペプチド由来リガンドや、ネオアンチゲン同定の可能なプロテオゲノミクスパイプラインを構築中であり、HLAリガンド同定のさらなる高深度化を目指している。
2: おおむね順調に進展している
HLAリガンド測定についてはサンプル前処理環境が整えられたため、2021年度に大きく進捗があった。同時にHLAリガンド同定に関するバイオインフォマティクス環境構築も大きく進捗があった。一方、培養細胞Lysateからのマイクロペプチド分離については測定条件の最適化がまだ完了していないため、次年度以降の課題といえる。
2022年度は、PDX癌検体の全細胞Lysate・HLA提示リガンド濃縮画分それぞれで、マイクロペプチドの同定を試みる。更に、別プロジェクトで測定された患者末梢血単核球から得たエクソーム配列、PDX癌検体から得たmRNA発現情報にもとづき、各患者におけるPersonalizedタンパク質アミノ酸配列ファイルを作成する。このPersonalizedタンパク質アミノ酸配列ファイルと共同研究者と構築するプロテオゲノミクスパイプラインを組み合わせ、質量分析計測定データから各患者で特徴的なマイクロペプチド発現プロファイルを明らかにする。更に、HLA class1リガンドーム測定結果についても同様のパイプラインで解析を実施し、各患者特有のマイクロペプチド発現とHLAリガンド提示マイクロペプチドの相関を検討する。もし患者の癌手術検体からペアとなる腫瘍浸潤リンパ球が樹立できている場合は、患者特有のHLA提示マイクロペプチドによって腫瘍浸潤リンパ球が活性化されるかどうかも、あわせて検討する。
一部の受託解析を2022年度へ延期させたため、その金額を次年度使用額として登録した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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