研究課題/領域番号 |
20K07339
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
駒井 浩一郎 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (40304117)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフラマソーム / ASC / スプライスバリアント / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
計画書課題1「ASCスプライスバリアントの機能の解明」 SARS-CoV-2由来ORF3aがASCに干渉してインフラマソーム機能亢進をもたらすことが報告されている(Siu KL et al., FASEB J, 2019)。そこでTHP-1細胞を用いたASCとORF3aの共発現系を構築し、ASC野生型と既に見出しているエクソン2欠損型スプライスバリアント(Δexon2)間の刺激後IL-1β産生を比較した。その結果、Δexon2では野生型と比較してORF3a共存下で高いIL-1β産生を示す傾向を認めた。またインフラマソームに結合するTHP-1細胞中因子を免疫沈降法と質量分析によって探索した結果、抗菌ペプチドDermcidinがASCとCaspase-1に結合することを認めた。 計画書課題2「ASCスプライスバリアントの産生機序の解明」 ASCはエクソン1上流SNPによってΔexon2が優位になる一方、IL-1βによって野生型が優位になることを認めている。そこでIL-1βのCaspase-1スプライシングへの影響も解析したが変動は認められず、IL-1βはSNPと共役的にASCスプライシングに影響を与える可能性が示唆された。そこでIL-1β刺激THP-1細胞のトランスクリプトーム解析をRNAseqによって実施した結果、スプライシング調節因子U1 small RNA variant (RNVU) やさまざまな転写因子の発現上昇を認めた。当研究室から報告済みの通り、Δexon2は野生型に比して高いIL-1β産生に関与する。これらより、SNPによるΔexon2発現によってIL-1βが亢進し、これがRNVUなどスプライシング制御因子を誘導することでΔexon2が減少するフィードバックループ が生じることでIL-1βなど炎症性サイトカインの周期的発現を惹起する可能性が示唆された(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始年度であった令和2年度は新型コロナウイルス感染症によって研究遅延を生じた。令和3年度は研究に従事していた大学院生の個人事由による休学など予想外の事態が生じるも、相応な研究成果が得られ、令和4年度に継続できたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
計画書課題1:ASC スプライスバリアントの機能の解明 ORF3a共発現系実験の再現性の確認およびORF3aによるASCへのユビキチン化程度の検討により、ORF3aとASC野生型/Δexon2の関連を明らかにする。またDermcidinのインフラマソーム機能への影響を明らかにするため、Dermcidinの発現抑制によるインフラマソーム機能への影響を検討する。 計画書課題2:ASC スプライスバリアントの産生機序の解明 令和3年度に得られた結果の検証を行うため、IL-1β刺激したTHP-1細胞におけるRNVU発現亢進をqPCRなどで検証する。さらにRNVUを人為発現させたTHP-1細胞におけるASCスプライシング変動を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学院生の個別事由による研究非従事期間が生じ、実施予定内容を変更したため当初見込み予算と差額が生じた。次年度使用額は主にインフラマソーム機能解析実験およびASCスプライスバリアント産生機構の解明実験に使用する試薬や消耗品経費として使用する予定である。
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