研究課題/領域番号 |
20K07343
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中野 正和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70381944)
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研究分担者 |
田代 啓 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10263097)
徳田 雄市 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (40833661)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチオミクス / 緑内障 / 人種差 |
研究実績の概要 |
緑内障は視野欠損が不可逆的に進行する眼疾患で、本邦では中途失明原因の第1位である。緑内障の一病型である落屑緑内障については、目の組織を構成するエラスチンの重合酵素をコードする遺伝子上の配列の違い(バリアント)が疾患に関連することが報告されている。しかし、疾患のリスクを規定するバリアントの配列が日本人と白人とで逆転していることが判明したことから、LOXL1以外の関連分子の存在が示唆された。そこで本研究では、日本人検体を用いたマルチオミクスを実施し、LOXL1周辺領域の配列情報や転写産物を精査することによって、落屑緑内障の発症機序を明らかにすることを目的とする。 本年度は、LOXL1領域(500 Kb)を次世代シーケンサーを用いてリシークエンス解析するために、ヒトゲノムから本領域を濃縮するための準備を実施した。標的配列濃縮法としては、Twist Bioscience社がキット化しているカバー率と均質性に定評のある溶液中でのハイブリダイゼーションに基づく方法を採用した。本領域の情報をTwist Bioscience社に提供し、in silicoでのプローブ設計を依頼したところ、カバー率は約85.6%という結果になり、他社のキットに比べても高い成績が得られた。 現在は、リシークエンス解析に供する検体(LOXL1バリアントのリスクアレルを保有する検体と保有しない検体をそれぞれ48症例ずつ、総計96検体)を選定中である。検体群が確定出来次第、濃縮実験および次世代シーケンサー用ライブラリーの作製に移行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的に、特定の領域をヒトゲノムから濃縮するにあたって領域のDNA配列の特性によってはカバー率が低くなってしまうことがあるため、LOXL1領域のリシークエンス解析に向けてカバー率の高いプローブが設計できたことは本領域の高精度なシークエンスデータを取得できることが期待される。検体群の選定もほぼ終えていることから、シークエンスデータの取得に速やかに移行したい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、LOXL1領域のシークエンスデータを取得し、LOXL1バリアントのリスクアレル保有の有無によるLOXL近傍の遺伝子群やゲノム配列のバリアントの差異をin silicoのツールも活用しながら解析する。 次年度以降は、同定されたバリアントの性質に応じて解析方針を立案し、バリアントの生物学的機能の解析を実施する。同時に、落屑緑内障患者由来の眼組織のトランスクリプトームデータの取得に向けた準備に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため学会がオンライン開催になり、旅費として計上していた経費を使用しなかったため。また、標的配列濃縮法に使用したキットがキャンペーン価格で安価に購入できたため。 本年度に取得するシークエンスデータの解析結果に基づき方針が決定するバリアントの機能解析用の消耗品購入費用として適切に使用していきたいと考えている。
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