研究課題
緑内障は視野欠損が不可逆的に進行することによって失明に至る眼疾患である。緑内障の病型の一つである落屑緑内障については、目の組織を構成するエラスチンの重合酵素をコードする遺伝子(LOXL1)上の配列の違い(バリアント)が疾患に関連することが報告されている。しかし、疾患のリスクを規定するバリアントのアレルが日本人と白人とで逆転していることが判明したことから、LOXL1以外の関連分子の存在が強く示唆されている。そこで本研究では、日本人検体を用いたマルチオミクスを実施し、LOXL1周辺領域の配列情報や転写産物を精査することによって、落屑緑内障の発症機序を明らかにすることを目的とする。昨年度までに、次世代シーケンサーによりLOXL1領域(500 Kb)をヒトゲノムから濃縮し、リシークエンス解析するための準備を完了した。標的配列濃縮法としては、Twist Bioscience社がキット化しているカバー率と均質性に定評のある溶液中でのハイブリダイゼーションに基づく方法を採用した。本キットを用いてLOXL1領域を濃縮するためのプローブをin silicoのプログラムを用いて設計したところ、500 Kbにわたる領域のカバー率は約85.6%という結果が得られ、他社のキットに比べて高い成績が得られた。現在は、リシークエンス解析に供する総計96検体(LOXL1バリアントのリスクアレルを保有する検体と保有しない検体をそれぞれ48症例分)の選定を終え、濃縮実験および次世代シーケンサー用ライブラリーの作製に移行しつつある段階である。
3: やや遅れている
本研究期間内に研究代表者がかつてJSTの支援を受けて整備し、本研究のリシークエンス解析に用いる血液検体やゲノムDNA、トランスクリプトーム解析に用いる眼組織を保管している超低温フリーザーが壊れてしまったため、本年度の予算で新しい超低温フリーザーを購入した。そのため、次世代シーケンサーによるリシークエンスデータ取得に必要な費用を次年度に計上することにしため、データ取得が当初の計画よりも遅れている。
LOXL1領域をヒトゲノムから濃縮した後に速やかにシークエンスデータを取得する。取得したデータに基づき、LOXL1バリアントのリスクアレル保有の有無によるLOXL近傍の遺伝子群やゲノム配列のバリアントの差異をin silicoツールを活用して解析する。同定されたバリアントの性質に応じてバリアントの生物学的機能の解析を実施する。並行して落屑緑内障患者由来の眼組織 のトランスクリプトームデータの取得も目指す。
本研究期間内に研究代表者がかつてJSTの支援を受けて整備した血液検体やゲノムDNA、組織を保管している超低温フリーザーが壊れてしまったため、本年度の予算で新しい超低温フリーザーを購入した。そのため、本年度に実施予定であった次世代シーケンサーを用いたリシークエンスデータ取得用の消耗品を購入することができず、残金を次年度に持ち越し、次年度の予算と併せて改めて購入することとした。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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