研究課題/領域番号 |
20K07345
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
合田 亘人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00245549)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 2型糖尿病 / ヘパトカイン / ニューレグリン1 |
研究実績の概要 |
薬剤投与によりPdx1プロモーター活性下でErbB3受容体の遺伝子を改変できるマウスを作出した。5週齢のマウスに対して3日間連続でタモシキフェンを投与することにより膵臓でErbB3遺伝子が改変されることをゲノムDNAを用いたPCR法により確認した。 ニューレグリン1遺伝子の発現誘導メカニズムの解明に取り組んだ。具体的には、マウス肝細胞に対して、2型糖尿病病態を模倣した様々な刺激を与え、ニューレグリン1遺伝子発現変化を定量的PCR法により解析した。その結果、低グルコース刺激およびAMPK活性化剤により発現が増強することを確認した。さらに、現在既に承認されている治療薬の内、ニューレグリン1遺伝子を変化させることができる薬剤の網羅的なスクリーニングを行った。具体的には、マウスニューレグリン1遺伝子の転写開始点上流4kb領域をレポーターベクターに組み込み、それをHEK293細胞にトランスフェクションした後、2000種の薬剤スクリーニングを行った。この1次スクリーニングにより、32種の薬剤がルシフェラーゼ活性を2倍以上上昇させうることを見いだした。 ニューレグリン1タンパク質の切断・分泌機構について解析に取り組んだ。具体的には、初代培養マウス肝細胞にFLAGタグ付きニューレグリン1遺伝子を発現させ、培地中に分泌されるニューレグリン1タンパク質断片をFLAG認識抗体で免疫沈降し、その断片のアミノ酸配列をLC-MS/MSにより決定した。その結果、膜貫通ドメイン部よりN末側15アミノ酸上流までのフラグメントを複数検出した。この15アミノ酸の中にはトリプシンで切断されるリジン残基が3箇所存在することから、これらのアラニン置換体を発現できる発現ベクターを作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大により、数ヶ月間研究室での実験が最低限のレベルに制限された。そのため、マウスの交配・作出を含め遅れが生じた。また、その後も持続的に研究室での実験を3密の状態を回避しながら行う必要から、通常状態の6~7割に留まっていることから若干の遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
膵臓特異的ErbB3遺伝子改変マウスに高脂質高糖質食を投与し2型糖尿病を発症させ、代償性膵島肥大におけるErbB3の役割とそれにかかわる分子機構の解析に取り組む。具体的には、経口糖負荷後の血糖値と血中インスリン量の変化を測定し、耐糖能と膵b細胞からのインスリン分泌能に対する膵ErbB3の役割を明らかにする。H.E.染色による膵島サイズ計測と増殖マーカー(PCNA、Ki67)の発現を組織学的に比較解析し、2型糖尿病による膵ラ氏島の代償性過形成における膵ErbB3シグナル経路の関与を示す。 2型糖尿病の肝臓におけるニューレグリン1遺伝子の発現機構について解析を継続する。具体的には、低グルコースおよびAMPK活性化剤投与に応答する転写因子とそのDNA結合領域の同定を進める。また、レポーターアッセイを用いた1次スクリーニングでヒットした32種の薬剤について、初代培養マウス肝細胞を用いてニューレグリン1遺伝子発現が増強するか確認する。この2次スクリーニングでも発現誘導が認められた薬剤について、かかわる転写因子とそのDNA結合領域の同定を進める。 ニューレグリン1タンパク質の切断・分泌機構についての解析に継続して取り組む。具体的には、アラニン置換したニューレグリン1発現ベクターを、初代培養マウス肝細胞に発現させ、培地中に分泌されるニューレグリン1タンパク質の断片をLC-MS/MSにより決定する。また、ニューレグリン1タンパク質の切断・分泌にかかわりうると想定されるいくつかのプロテアーゼの発現ベクターを作成し、ニューレグリン1遺伝子発現ベクターとともにHEK293細胞にトランスフェクションし、分泌が増強しうるプロテアーゼを同定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により予定していた計画の遅延が生じたため
|