研究実績の概要 |
ヒト染色体15q11-13の重複は自閉症において高頻度に認められる染色体異常である。本研究代表者らは本領域を重複させた自閉症モデルマウス(15q dup)の作製し、自閉症様の行動学的異常、縫線核におけるセロトニン神経の活動低下、幼少期におけるシナプス代謝の亢進など、種々の特徴的な異常を見出した。本研究目的は、自閉症様行動異常、またはシナプス異常に対して、15q11-13領域におけるどの遺伝子が重要であるかを同定すること、またその分子メカニズムを明らかにすることである。 本年度は①標的遺伝子(Ndn)の同定、②Ndn遺伝子の細胞内局在、③下流同定のためのFIN seqの立ち上げ、の3つの事項について行った。まず、15q dupマウスからNdn遺伝子のみをWTと同じコピー数に戻したマウス(15q dupΔNdn)の解析を行い、自閉症様行動、シナプスの形成率、興奮性/抑制性バランスなど、種々の異常が改善されたことを見出し、この結果を論文投稿した。現在、審査員より指摘された箇所を修正し、再投稿中である。 また、Ndn遺伝子の機能的役割を調べるために、子宮内電気穿孔法により大脳皮質の錐体細胞に導入したところ、顕著に核内に局在することを明らかとした。このことからNdnの核内における機能が特にシナプスの形成に重要であると考えられる。更に核内局在型Ndn、閣外局在型NdnのDNAコンストラクトを調製し、現在、これらのシナプス形成への影響を調べて、核内Ndnが重要かどうかを判定している。 Ndnは過去の報告から転写因子の補因子として働くことが知られている。そこで次に、Frozen Immunolabled Nuceli Sequencing (FIN seq, Amamoto et al., 2019)を用いてNdnが導入された細胞を抽出、mRNAの発現解析を行い、Ndnの直接的な下流因子を同定する。このために現在FIN seqの立ち上げを行っている。
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