研究課題
アルツハイマー病モデルマウスを対象として、アルツハイマーの脳におけるグルタチオン代謝異常の機序を解明するため、複合遺伝子改変マウスの作出、脳内グルタチオン関連分子の測定、定量PCRを進めた。アルツハイマー病モデルマウスであるAPPV717I::TAUP301LおよびAppNLGF、さらに遺伝子改変によるNrf2活性化アルツハイマー病モデルマウスとしてAPPV717I::TAUP301L::Keap1FA/FAマウスおよびAppNLGF::Keap1FA/FAマウスを作出した。加えて、薬剤によるNrf2活性化として、Nrf2活性化剤CDDO-ImおよびCDDO-2P-ImをAPPV717I::TAUP301LおよびAppNLGFマウスに2週間経口投与した。野生型マウス、AppNLGFマウス、AppNLGF::Keap1FA/FAマウスの脳におけるグルタチオン濃度を、1,5-DANをマトリックスとして用いたMALDI-質量分析イメージング法で測定したところ、野生型マウスと比較してAppNLGFマウスで総グルタチオン(還元型+酸化型)の低下を認め、AppNLGF::Keap1FA/FAマウスでは総グルタチオンは増加していた。LC-MS/MSにてNEMで誘導体化した還元型グルタチオン測定したところ、同様にAppNLGF::Keap1FA/FAマウスでは還元型グルタチオンの増加を認めた。AppNLGFマウスへのCDDO-Im投与、およびAPPV717I::TAUP301LマウスへのCDDO-2P-Imの投与にて、LC-MS/MSにより脳における還元型グルタチオンの増加を認めた。さらに、AppNLGFマウスへのCDDO-Im投与、およびAPPV717I::TAUP301LマウスへのCDDO-2P-Imの投与にて、これらのNrf2活性化剤が脳内に移行することをLC-MS/MS法にて確認した。
2: おおむね順調に進展している
アルツハイマー病モデルマウスに対して、Keap1遺伝子改変によるNrf2活性化、および薬剤によるNrf2活性化を導入したモデルマウスを作出し、グルタチオンの代謝に関する解析を実施した。グルタチオンは反応性が高く、正確な測定は困難であるが、NEM誘導体化を利用したLC-MS/MSによる測定方法により、より正確なグルタチオン濃度を測定することができた。さらに、1,5-DAN HClをマトリックスに用いたMALDI-質量分析イメージング技術を導入することで、グルタチオン合成に関連する代謝物を測定するための準備をすすめることができた。
これまで作出したアルツハイマー病モデルマウスであるAPPV717I::TAUP301LおよびAppNLGF、遺伝子改変によるNrf2活性化アルツハイマー病モデルマウスであるAPPV717I::TAUP301L::Keap1FA/FAマウスおよびAppNLGF::Keap1FA/FAマウス、薬剤によるNrf2活性化モデルであるCDDO-ImおよびCDDO-2P-Im投与APPV717I::TAUP301LマウスおよびAppNLGFマウスに対して受動回避試験を実施する。11ヶ月齢のマウスのアルツハイマー病およびNrf2活性化アルツハイマー病モデルマウスの脳組織をサンプリングし、LC-MS/MS法にて、GSH合成の中間代謝物である γ-グルタミルシステインを測定する。さらに、GC-MS法にてグルタチオン合成に関連するアミノ酸などの代謝物の解析を実施する。
予定していた解析について、次年度に変更になった。質量分析および定量PCRに使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
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