研究実績の概要 |
ゴルジ体は、cis, medial, trans の各槽から構成され、一体化して一連の生化学反応を行っていると考えられてきた。しかしながら、申請者はtrans膜のみが cis, medialと乖離し、独自に分泌タンパク質などを分解する細胞機能を発見し、これをGolgi-membrane associated degradation pathway (GOMED)と命名した。GOMEDは、分泌タンパクの分泌制御や神経細胞の維持など重要な生理機能を担っている。即ち、GOMEDは新たに発見されたゴルジ体の重要な機能である。しかしながら、[1]どのようにしてtrans 膜がcis, medial から乖離してGOMEDが実行されるか? [2] この時、糖鎖付加や分子運搬などのゴルジ体機能はどうなるか? [3] GOMEDはいかなる細胞で、どのような生理的な役割を果たしているか?については不明であった。本研究では、これらの問いを解決し、ゴルジ体の新たな機能の実態を明らかにすることを目的に研究を推進してきた。はじめに細胞生物学的解析により、(1) GOMEDに関わる因子として、 新たにWipi3の同定に成功した。そして (2)分泌阻害により、細胞質中に散在していたWipi3は脱リン酸化されてゴルジ体に局在化すること、(3)その働きによりゴルジ体膜が湾曲化し隔離膜となること、を見出した。さらに、Wipi3神経細胞特異的欠損マウスの解析から、(4)プルキンエ細胞において鉄代謝・輸送を担うセルロプラスミンが細胞内に蓄積していること、(5)それに伴い鉄が蓄積していること、が判明した。これらの結果より、この機構の破綻によりプルキンエ細胞の脱落がおこり神経変性疾患を惹起していることを明らかにし、nature communに論文を発表した。
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