研究課題/領域番号 |
20K07355
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
付 友紀子 名古屋大学, 環境医学研究所, 学振特別研究員(RPD) (20381890)
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研究分担者 |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視床下部 / 慢性炎症 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
慢性炎症は肥満の病態基盤を成すが、特にエネルギー代謝調節中枢である視床下部において、末梢臓器に先行して慢性炎症が生じ、肥満の病態形成に寄与することが明らかになってきた。即ち、持続的な過栄養は、脳常在性のミクログリアや末梢から浸潤するマクロファージの増加や活性化をもたらし、視床下部ニューロンのフィードバック機構を撹乱するという。しかしながら、視床下部炎症の時空間的動態は未だ不明の部分が多い。本研究では、CX3CR1-CreERT2マウスを駆使してミクログリア・マクロファージを時空間的に標識により、視床下部におけるミクログリア・マクロファージの時空間的動態の解明を目指す。 今年度は、高脂肪食負荷により誘導される視床下部炎症の形成過程において、脳常在性ミクログリアや末梢由来マクロファージ、を経時的(3日、7日、4週間)、神経核特異的(弓状核、室傍核)に検討した。ミクログリアとマクロファージの区別には、CX3CR1-CreERT2:tdTomato floxマウスを用いる。即ち、本マウスにタモキシフェンを投与すると、当初はミクログリアと末梢血単球の両方が蛍光標識されるが、常に新たな細胞が骨髄から供給される末梢血単球は4週間後までに非標識のものに置き換わり、ミクログリアとマクロファージを区別することができる。免疫染色法を用いた検討では、肥満の過程で各神経核(弓状核、室傍核)に特徴的なマクロファージ系細胞の細胞数や活性化状態に変化が生じることを見出した。 肥満の病態基盤を成す慢性炎症の分子メカニズムとして、免疫担当細胞の“量”と“質”が注目されている。今後、高脂肪食負荷による視床下部での免疫細胞の質と量の変化、例えばミクログリアの炎症抑制性M2から炎症促進性M1に極性の変化による神経機能への影響を経て末梢臓器の炎症制御機構を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、CX3CR1-CreERT2:tdTomato floxマウスを用いて、視床下部においてミクログリアとマクロファージを区別できること、肥満の過程で各神経核に特徴的なマクロファージ系細胞の細胞数や活性化状態に変化が生じることを見出している。特に、従来知られていなかった室傍核におけるマクロファージ系細胞の動態について、脳血管関門を欠く弓状核から離れているにもかかわらず、予想外にマクロファージ浸潤が観察されたことなど、重要な知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
肥満の病態基盤を成す慢性炎症の分子メカニズムとして、免疫担当細胞の“量”と“質”が注目されている。例えば脂肪組織では、体脂肪量の増加に伴って、マクロファージ浸潤が増加するのみならず、炎症抑制性M2から炎症促進性M1に極性が変化し、脂肪組織の機能障害を惹起する。本研究課題の今後の推進方策としては、免疫染色法に加えてフローサイトメトリー、レーザーマイクロダイセクション法などを利用して、視床下部におけるミクログリア・マクロファージの“量”と“質”を解析する。また、視床下部よりミクログリアとマクロファージをソーティングして、トランスクリプトーム解析を実施する。これにより、それぞれの細胞群で特異的に変動する遺伝子群を抽出し、活性化状態を時空間的・細胞特異的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に、レーザーマイクロダイセクション解析とともに学会において発表する予定であったが、新型コロナウイルスの影響で未実施のため、未使用額が生じた。 このため、レーザーマイクロダイセクション解析と学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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