本研究では、CX3CR1-CreERT2マウスを駆使してミクログリア・マクロファージを時空間的に標識することにより、視床下部におけるミクログ リ ア・マクロファージの時空間的動態の解析を行なった。CX3CR1-CreERT2:tdTomato floxマウスを用いて、視床下部においてミクログリアとマクロファージを区別できること、肥満の過程で各神経核に 特徴的なマクロファージ系細胞の細胞数や活性化状態に変化が生じることを見出した。特に、従来知られていなかった室傍核(PVN)におけるマクロファージ系 細胞の動態について、脳血管関門を欠く弓状核から離れているにもかかわらず、予想外にマクロファージ浸潤が観察されたことなど、重要な知見を得ている。室傍核PVNではより長期間(8週以上)の高脂肪食負荷しかミクログリアの活性化が認められなかったが、高脂肪食負荷4週間で、PVNで血管周辺マクロファージの形態変化が観察された。また、高脂肪食負荷4週間で視床下部BBBの破綻を色素エバンスブルー尾静脈投与マウスで確認できた。これらのことにより、血管周辺マクロ ファージの形態変化はPVNでのBBB機能破綻およびミクログリアの活性化に関係する可能性が示唆された。 また、ミクログリア特異的にジフテリア毒素受容体を発現させた遺伝子改変マウス(Siglech_DTRマウス)に、ジフテリア毒素を腹腔内または脳室内投与により短期間(2週間まで)の視床下部でのミクログリア除去効果を確認できた。NASH病態におけるミクログリアの機能的意義を解明するため、より長期間ミクログリア制御モデルが必要と考えられ、今後の更なるの検討とする。
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