本研究では個体レベルでのCKAP4の機能をミトコンドリア代謝に注目して解明することを目的とする。令和5年度は、高脂肪食飼育した野生型マウスおよびCKAP4 KOマウスからクッパー細胞をCD11bやF4/80など表面マーカーに対するFACSで試みたが、十分な細胞数を回収することができなかった。そこで、トリプシンによりばらばらにした肝細胞集団をディッシュに播き、30分後に接着した細胞のみを回収することにより、クッパー細胞を濃縮し、RNAを回収することに成功した。今後はRNAシークエンス解析を行い、CKAP4 KOマウスで発現が変動した代謝および脂肪代謝に関連する遺伝子については、リアルタイムPCRやウエスタンブロット等で発現の変動を確認する。変動が確認できた遺伝子については、野生型およびCKAP4 KOのクッパー細胞で過剰発現およびノックダウン実験を行う。CKAP4 KOマウスおよび野生型マウス由来のクッパー細胞を用いて、小胞体の構造やミトコンドリア機能、糖の取り込みや脂肪代謝について過剰発現やノックダウンの影響の有無を検討する予定である。 CKAP4の機能についてはこれまで主に培養細胞を用いた細胞レベルでの実験によって解析されてきた。しかし、CKAP4 KOマウスについての文献報告は私共以外にはまだなく、個体レベルでの機能解析はこれまで全く行われてこなかった。私共が独自に作製したCKAP4 KOマウスを用いることで、これまで培養細胞を用いた実験で明らかになってきたCKAP4の多彩な機能が個体における糖・脂質代謝調節に如何に関連するかを明らかにすることができた。
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