本研究では新たな肝線維化の抑制機構を見出すことを目的とし、線維化の本体である肝星細胞の活性化において発現が変動するリン脂質代謝酵素Aを見出した。2022年度までにはリン脂質代謝酵素Aのノックダウンにより、ヒト星細胞 (Lx-2)はTGFβ刺激によるSmad2のリン酸化の亢進と線維化マーカーであるαSMA1やCol1A1の発現の顕著な増加が確認された。この時、LPS刺激によるNFκB等の他のシグナル伝達系には影響が見られなかったため、観察された線維化系の亢進は抗炎症系のシグナルとは独立したものであることがわかった。細胞内に取り込まれたTGFβの細胞内挙動には差が認められなかった。 TGFβシグナル関連分子の発現解析を行ったところ、TGFβ受容体の発現上昇やSREBP1の発現上昇が確認された。なぜこれらの遺伝子発現が上昇するのかについての詳細なメカニズムはまだ明らかにできていないが、リン脂質組成の変化が肝線維化に影響を与えるという重要な知見が得られた。
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