研究課題/領域番号 |
20K07364
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 大介 神戸学院大学, 栄養学部, 講師 (10439698)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TP63 (Trp63) / 上皮細胞 / 幹細胞 / 外胚葉異形成症候群 / 増殖 / 分化 |
研究実績の概要 |
外胚葉異形成症候群の亜群が転写因子p63の機能異常に起因することを発見した申請者らは、その原因となるp63C末端領域 (Cα)を介した分子メカニズムの解明に取り組んでいる。Cαにはタンパク質結合モチーフが存在するため、何らかの分子の結合を通して生理的に働くことが想定され、これまでにプロテオーム解析によってCαに結合するタンパク質候補の探索を行ってきた。in vitroタンパク質結合アッセイにより一次スクリーニングを行ったところ、Cαに結合する活性をもつ候補分子を複数抽出することができた。そして、我々は脱リン酸化アッセイによってp63分子がリン酸化タンパク質であることを確認したことから、候補分子の中でキナーゼ活性をもつタンパク質に注目した。その中で、データベース解析および文献検索により、p63陽性細胞が存在する組織で発現が認められる3つの候補分子に解析対象を絞り込んだ。実際の発現分布を組織学的に確かめるために、ヒトの上皮組織およびp63陽性ヒト上皮細胞(培養)において、p63分子とともに免疫二重染色を行い、その結果、p63が細胞核に強いシグナルを示す中で、候補分子2つについて細胞内局在を特定する陽性シグナルを得た。これら候補分子にはp63をリン酸化修飾する機能が期待されるため、精製タンパク質を調製し、in vitro リン酸化アッセイを実施した。その結果、現在、候補分子の1つについて、p63をリン酸化する活性があることを示す予備データを得ており、これを確定することができた段階で、候補分子の機能的役割に目を向けていく計画である。 本年度は、新規に起ち上げた研究室における基本実験の環境整備を進めるため、本研究費の支援によって冷却機能の付いた遠心分離機、そして顕微鏡下で撮影を行うカメラシステムを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年間の活動において、Cα領域に結合するタンパク質群を絞り込み、組織学的な発現解析において候補分子の細胞内局在を示し、そして絞り込んだ候補分子がp63分子に対するリン酸化活性をもつことを示すデータを通して、候補分子とp63の間に分子的相互作用が期待できる段階に達している。従って一年目(令和2年度)に計画した目標については、おおよそクリアすることができた。しかし初年度に大幅な遅れをとった背景から、令和3年から予定していた分子機能調節を検証する実験に着手することができていない。この遅れは、2020年初頭から見舞われた新型ウイルス感染症拡大が大きく影響しており、教育形態の変更から教育/研究エフォートのバランスに大きな変更を伴ったことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、リン酸化アッセイにより、候補分子がp63をリン酸化する機能を確定する。それと並行し、ヒト初代上皮培養細胞において、候補分子によるp63分子の機能調節がどのような生理的作用に関わっているのか特定するための解析に着手する。そのために、候補分子を過剰発現あるいはノックダウンしたヒト上皮細胞を樹立する実験系を起ち上げる。それら細胞株の樹立の後、各候補分子がcell cycle制御にどのような影響を与えるか観察を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
本教育研究機関に赴任して3年が経過し、実験的解析に必要な必須機器が不足していることを次第に把握する状況となっている。そこで、消耗品の購入を優先するのではなく、実験機器の購入に充当するのが賢明と考えられ、検討を始めている現状である。そのため、令和3年度の研究費を持ち越し、合計した最終予算をもって機器の購入を行う予定をしている。
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