研究課題/領域番号 |
20K07366
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
荒川 憲昭 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 主任研究官 (60398394)
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研究分担者 |
花岡 正幸 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20334899)
斎藤 嘉朗 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 部長 (50215571)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | びまん性肺胞傷害 / DAD / 薬剤性間質性肺炎 / 肺胞上皮細胞 / Stratifin |
研究実績の概要 |
間質性肺炎の病型の中で、びまん性肺胞傷害(DAD)は特に予後がわるい。我々は、Stratifin(SFN)が、DADの新しい血液診断マーカーとなる可能性を見いだしたが、SFNは肺における役割や機能について未解明な部分が多く、びまん性肺胞傷害との関連性も不明である。そこで本年度は、肺由来の細胞がSFNを発現する可能性があるのかどうか検討するために、種々の培養細胞を用いてSFNの発現解析を行った。SFNタンパク質はウエスタンブロットおよびELISA法にて、遺伝子発現はリアルタイムRT-PCRにより解析した。 気管支上皮由来のHBEC-3KTやNuli-1細胞株、あるいはその初代培養系のHPAEpiC細胞では、細胞内および培養上清中におけるSFN発現量は基礎レベルから高かったが、これらに比べて、II型肺胞上皮由来のA549細胞や肺線維芽細胞の初代培養系NHLFやDHLFでは、SFN発現量は低かった。また、A549やおよび肺線維芽細胞では、血小板由来増殖因子(PDGF)やTGF-β1で刺激を行っても、SFNの発現には変化は見られず、肺の線維化にはSFNは関与していない可能性が示唆された。しかし、A549細胞では、JNJ26854165やNutlin-3、ブレオマイシン、シスプラチンや過酸化水素等の処理により、転写因子p53の活性化が起きるとともに、SFN遺伝子の発現上昇が起き、細胞内よりもむしろ、培養上清中のSFNタンパク質量が著しく上昇した。これらの結果から、DADパターンを呈する間質性肺炎の患者の血中で増加するSFNの産生源の一つは、肺胞上皮である可能性があり、肺胞上皮では損傷を受けた際のp53活性化に伴いSFNが発現上昇し、細胞外(血中)へ放出される可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで肺胞上皮とStratifinの関係は不明な点が多かったが、本解析により、肺胞上皮におけるStratifin発現、細胞外への放出する機序が明らかになりつつある。順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚では、表皮角化細胞が産生した Stratifinが隣接する真皮線維芽細胞に作用し、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)-1やMMP-3など、種々のMMPsを発現誘導することが知られている。肺線維芽細胞でもStratifinによるMMPs等の発現変動が起きるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は肺上皮組織の三次元培養モデル(海外輸入品)を購入し実験に使用する予定であったが、世界的な新型コロナウイルス感染症流行により入荷の予定が読みにくい状況となったため、実験計画を変更した。また、参加する予定だった学会の中止が相次いだこともあり、使用額に変更が生じた。
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