研究課題/領域番号 |
20K07372
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤倉 航平 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (50773751)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵癌 / 前癌病変 / 脱メチル化 |
研究実績の概要 |
膵癌は抗癌治療の発展した現在においても予後不良であり、難治癌の代表的存在として知られている。膵癌では多段階発癌モデルが実証されており、膵管上皮細胞や腺房細胞に、KRAS、CDKN2A、TP53、SMAD4等の遺伝子変異が積み上がり、組織学的に定義された前駆体(前癌病変)を介して、浸潤癌に進行すると考えられている。しかしながら、これらBIG4の変異の前段階、つまり腫瘍発生最初期における細胞内異常は依然として未解明である。研究代表者は、膵腫瘍発生の最上流を解明するために、DNA脱メチル化中間産物及び脱メチル化酵素TETを組織学的に解析している。膵癌・前癌病変4型 (PanIN、IPMN、MCN、IOPN) ・正常膵管上皮を対象に、DNA脱メチル化中間産物である5-ヒドロキシメチルシトシンを免疫組織学的に染色したところ、ほぼ全ての病変で異常低下を確認した。この現象は病変のGradeに関わらず観察され、PanINとMCNにおいては高異型度病変でより強い低下が観察された。5-メチルシトシンから5-ヒドロキシメチルシトシンへの転換には、TETファミリー遺伝子が必要なため、その代表であるTET1を染色したところ、同様に発現の異常低下が確認された。5-ヒドロキシメチルシトシンの存在量とTET1の発現量には明瞭な相関関係が観察され、TET1の低下が5-ヒドロキシメチルシトシンの低下の原因である可能性が示唆された。現在、TET1と5-ヒドロキシメチルシトシンの低下の程度と各種臨床病理学的因子との関連を検索している。脱メチル化が初期の膵腫瘍においても異常を来していることを包括的に解析し明らかにしたのは、本研究が初めてであり、症例数も多いことから臨床的にも意義は大きい。血液疾患を中心にエピジェネティクス制御化合物が臨床応用されており、将来的にこれらの治療薬の膵腫瘍への応用も視野に入る可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した予定通りに、研究が進んでいる。臨床検体を用いた免疫組織学的解析では、概ね想定していた結果が得られており、研究方針の大幅な変更はない。まずは病理学的および臨床学的解析をまとめた段階で、病理学系の雑誌への投稿を予定しており、それが可能な段階に来ているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って研究を進める。具体的には、膵腫瘍検体の免疫染色を継続し、染色パターンをまとめ、各種臨床病理学的因子との関連があるのかを解析する。何らかの相関関係が観察されれば、更に細かい因子ごとに分類し、詳細な解析を行う。少数であるが保存状態が不良の検体も含まれており、染色結果が陰性であるのか検体不良であるかの判断等、細心の注意を払って、評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色にかかった費用が少なかったため。
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