研究課題/領域番号 |
20K07374
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
長田 佳子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50304209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Epstein-Barr ウイルス (EBV) / 再活性化 / 抗体産生 / バセドウ病 / 自己免疫疾患 / TSHレセプター抗体 (TRAb) / IgM抗体 |
研究実績の概要 |
Epstein-Barrウイルス(EBV)はほとんどの成人に潜伏感染しているヒトヘルペスウイルスである。主としてB cellに潜伏感染し、その再活性化により宿主B cellの形質細胞への分化と抗体の分泌が誘導される。我々は、胚中心・骨髄を介する抗体産生とは別の抗体産生経路である、EBV再活性化に誘導される抗体産生経路を提唱している。 TSHレセプター抗体 (TRAb) はバセドウ病の原因となる自己抗体である。今年度(令和2年度: 2020年度)はEBV再活性化によって産生された自己抗体であるIgM型のTRAbの分離精製に注力した。当初Ni-SepharoseとHis-tag-TSHレセプターaサブユニットタンパクによって、アフィニティー精製を試みるも、レセプタータンパクへの抗体の結合不全、またはtagの長さ不足のため、十分な回収が得られなかった。このためfull-length TSHレセプターによるアフィニティー精製に変更し、回収に成功した。このIgM-TRAbのブタ甲状腺濾胞上皮細胞に対する作用と、TSH結合阻害活性についての検討をおこなった。 以上の結果を第94回日本薬理学会年会(Web参加)にて発表した。また、今までの研究成果について、Microorganisms誌(IF: 4.152)にreviewを投稿し掲載された(Nagata K, Hayashi K., Epstein-Barr virus reactivation-induced immunoglobulin production: Significance on autoimmunity., Microorganisms 8 (12): E1875, 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「EBV再活性化に誘導される抗体産生系」は、従来の「胚中心・骨髄を介する抗体産生系」とは別の抗体産生系である。今年度は、EBV再活性化に誘導される抗体産生系によって産生される抗体のひとつである、IgM型のTSHレセプター抗体(TRAb)を分離精製することに成功した。IgG型のTRAbは甲状腺ホルモン産生を刺激することが知られているが、EBVが産生するIgM-TRAbは甲状腺濾胞上皮に対して、どのような作用を持つのか、結果が集積しつつある(投稿準備中)。 EBVは、乳幼児期に経口摂取がはじまるころに家族から唾液を介した初感染がおこると言われているが、ワクチン作成を考える上で、EBVの感染経路を再検討する必要が出てきたため、これについても検討を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
ワクチン開発、siRNA薬開発を目的としたEBVのシークエンス解析については、潜伏感染しているEBVの患者・健常者で比較したシークエンス解析と並行して、初感染の感染様式についても、さらに検討を加える。 EBV再活性化に誘導される抗体産生系は、バセドウ病以外の自己免疫疾患にも関与していると考えられ、他教室、他施設との共同研究も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験操作を行っている途中で決算時期を迎え、結果の良しあしによって、実験資材を購入する必要があったため、使用額に余裕を残しながら、実験を継続しました。 残余額は次年度の実験のために使用予定です。
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