研究実績の概要 |
本研究は、「動脈硬化症の病理組織像の形成にNLRP3インフラマソームがどのように関与しているのか」を学術的な問いとして挙げている。2020年度は、インフラマソームが恒常的に活性化している疾患の一つであるマックルウェルズ症候群の実在の遺伝子変異を挿入したモデルマウス:CAPSモデルマウスを用いて、動脈硬化症におけるNLRP3インフラマソームの寄与を明らかにすることを目標とした。 当教室で作成したCAPSモデルマウス(論文準備中)はマックルウェルズ症候群と類似した皮膚症状をきたすことはすでに確認していたが、実際脾細胞に対しLPS刺激を行うことで野生型と比して高いIL-1βの放出をきたすこと、また、同様に本教室で作成したNLRP3未発現マウスは同刺激に対し反応が著しく低下していることを確認した。これらのマウスを用いて胎児期から12カ月齢に及ぶまで長期間、多段階的に体重の推移、血液、組織学的サンプルを得た。さらに、経時的に心臓超音波検査を行うことで長期経過において血行動態と心臓形態がドラマティカルに変化することを見出した。 これらの所見は長期間の観察と継続したサンプル採取によってのみ成しえるものであり、2020年度一年間でおおむねサンプル採取は終了したことが実績である。 また、NLRP3インフラマソーム活性阻害因子の効果の検証をIDOLマウスを用いたin vivo実験で定量化し、論文化した( Kaneko, Kurata, Masumoto, et al. Sci Rep. 2020 )。
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