研究実績の概要 |
HL(古典的ホジキンリンパ腫)は腫瘍細胞(ホジキン細胞)が病変リンパ節にごく少数しか存在しないが、その背景に多くの正常なリンパ球、組織球、好酸球に繊維化を伴う炎症性細胞などの浸潤を伴い、多彩な組織像を呈する。HLの本体であるホジキン細胞の起源はB細胞のクローナルな増殖であるが、腫瘍組織全体の1%未満と少なく、多くはホジキン細胞から産生されるサイトカインやケモカインによって浸潤してきた反応性炎症細胞が占める。一方、ホジキン様ATLLでは、ホジキン細胞の起源はB細胞のポリクロナールな増殖であることが分かっている。最近の研究では、IL10がFoxP3陽性の抑制性T細胞を活性化し、HTLV1のHBZを活性化することが分かってきている。また従来ホジキン細胞はIL10を発現し、周囲には抑制性T細胞が存在することが分かっている。微小環境の解明のため、濾胞性リンパ腫で、intrafollicular regionとextrafollicular regionをレーザーマイクロダイセクションで切り抜き、RNAを抽出し、Gene expression profilingを実施し、extrafollicular regionでIL3RA、CXCL12を含むサイトカイン関連遺伝子が高発現していることを見出した。これらの遺伝子は、FLのextrafollicular growth、また進展に関与している可能性があることを論文にした(Yoshida N, Miyoshi H, Arakawa F, Nakashima K, Kawamoto K, Seto M, Ohshima K. Hematol Oncol. 38(5):673-679, 2021)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
濾胞性リンパ腫での微小環境の解明のため、腫瘍免疫関連蛋白の発現に関する臨床病理学的検討を現在行っており、複数の腫瘍免疫関連蛋白、濾胞内増殖域とびまん性殖域での比較、初発例と再発例間での比較、予後の解析を、初発 174症例、(濾胞状増殖域: 174 area 、びまん性増殖域: 42 area)、再発例 50例 でPD-1, PD-L1, PD-L2, Tim-3, Galectin9, CTLA-4, CD86, CD80, LAG3, OX40, OX40L, GITR, GITRL, CD137, CD137L の15蛋白で免疫染色を行った。その結果、1) CD86, PD-L1, PD-1, Galectin9, OX40, CTLA4, Tim3, OX40L LAG3は腫瘍細胞や周囲間質組織のT細胞、マクロファージ、FDCの様々な細胞に発現が確認された。2) 各腫瘍免疫関連蛋白の発現とIgH-bcl2の融合、組織グレード、FLIPIに特徴的な関係性はみられなかった。3) これらの蛋白の発現は濾胞内とびまん性増殖域、初発と再発例の間で差異がみられた。特にmiTim3(mi:腫瘍細胞ではなく背景)は初発例に比較して再発症例で有意に多く間質細胞での発現がみられ(p=0.0491)、LAG3は初発例に比較して再発症例で多く発現がみられる傾向にあった(p=0.0648)。4) 予後に差があるものもあった。特にmiOX40L低発現群が予後良好であった。現在このことを論文化している。ホジキン様ATLLと古典的ホジキンリンパ腫に関しては、現在、症例の確認を行い、臨床病態を含め、データベースを作成中である。
|