研究課題/領域番号 |
20K07383
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
森 泰昌 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (00296708)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭頸部がん / TP53 / ゲノム解析 / クロマチン解析 / 治療開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、頭頸部扁平上皮癌を時空間的にゲノム・トランスクリプト―ム解析と、がんの不均一性やゲノム異常の蓄積、それに伴う治療抵抗性を理解し、予後への影響とクロマチン領域のアクセシビリティの変化から遺伝子発現に関連するゲノム領域の特定と結合転写因子の推定から新規ファーストラインとなる薬剤の選択による個別化治療開発を行うことにある。頭頸部癌においては異時性・同時性重複癌が多いことが知られていることに着目する。発生した重複癌の多くは異なるクローンから発生していることが明らかとなっており、それはfield cancerizationによると理解されている。しかしながら、そのサブポピュレーションには違いがあることから、多様性を規定するサブポピュレーションの違いを腫瘍発生機序やHPVのタイプ、形態学的変化と合わせて解析する。2020年度は、2013~2015年に当科で外科的根治治療を行った、317例の匿名化された詳細な臨床情報のデータベースに転機については随時更新を行った。パラフィン包埋標本あるいは新鮮凍結標本からのDNAを抽出し、シークエンサーを用いて癌関連遺伝子のTP53、AKT、HRAS、PIK3CAならびにCDKN2A, 2B, 1C、PTEN、NOTCH1-3、NF1をターゲットとしたエクソン領域を解析を進めている。また先のドライバー変位の見られない症例についてのホールエクソーム解析についても準備をすすめている。またパラフィン包埋標本からRNAseqを用いて、RNAの変異発現量および融合遺伝子解析を進めた。その結果、新規の融合遺伝子を発見し、その意義についての解析を進めている。またsingle cell RNA sequenceを2例について実施しデータ解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析から頭頸部扁平上皮癌にはいわゆるアルコール・タバコを要因とするグループ以外にウイルス感染や移植後の免疫抑制状態などの特異的な状況下での別の要因と考えるグループが存在することが明かとなってきている。その血液腫瘍の移植緩解後の別の固形癌を二次がんと規定している。これらの二次がんと多発癌を対象とし、WES解析を通じてゲノム異常を明らかにする。これによってサブポピュレーションの違いや臨床病理学的な評価を加えることで、発生部位による違いについて解析を始める。また、BRCAnessやマイクロサテライト不安定性(MSI)といったオンコパネルを用いた、がんゲノム医療による分子標的薬(PARP阻害剤など)の対象となるsignatureなどの相関性について解析を進め、臨床応用に適した基盤を整備する。
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今後の研究の推進方策 |
同一症例における複数回発症腫瘍検体を免疫組織化学的に、遺伝子変異とともにクローン解析を進める。また、これまで知見に乏しいサブポピュレーションにおけるsingle cell RNA seqやATAC解析による形質の違いを明確にする。これまでの“診断医の感覚的な観点”とされている再発・重複を鑑別する形態学的特徴について検討を行いデジタルイメージと分子生物学的特性について比較検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に購入予定であった消耗品が、海外発送のため遅延し翌年度での購入としたため。同消耗品は翌年度での購入を実施した。
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