研究実績の概要 |
本研究の目的は、頭頸部扁平上皮癌を時空間的にゲノム・トランスクリプト―ム解析と、がんの不均一性やゲノム異常の蓄積、それに伴う治療抵抗性を理解し、予後への影響と新規ファーストラインとなる薬剤の選択による個別化治療開発を行うことにある。頭頸部癌においては異時性・同時性重複癌が多いことが知られていることに着目する。発生した重複癌の多くは異なるクローンから発生していることが明らかとなっており、それはfield cancerizationによると理解されている。しかしながら、そのサブポピュレーションには違いがあることから、多様性を規定するサブポピュレーションの違いを腫瘍発生機序やHPVのタイプ、形態学的変化と合わせて解析する。2020年度は、2013~2015年に当科で外科的根治治療を行った、317例の匿名化された詳細な臨床情報のデータベースに転機については随時更新を行った。パラフィン包埋標本あるいは新鮮凍結標本からのDNAを抽出し、シークエンサーを用いて癌関連遺伝子のTP53、AKT、HRAS、PIK3CAならびにCDKN2A, 2B, 1C、PTEN、NOTCH1-3、NF1をターゲットとしたエクソン領域を解析を進めている。2021年度はさらに追加された頭頸部扁平上皮癌FFPE検体からのmulti-regionエクソーム解析について50例以上解析を完了した。2022年度は頭頸部扁平上皮癌FFPE検体からのmulti-regionエクソーム解析に加え、再発症例について時間的な変化と転移リンパ節を含めたの解析を6例について解析した。これまでの空間的な解析と時間的解析から一つの腫瘍と考えられている中に少なくとも3つ以上のクローンが存在することを明らかとした。また薬剤ターゲットとなり得るドライバーの領域的な存在を明確とした。
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