研究課題/領域番号 |
20K07386
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋木 由利子 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80311223)
|
研究分担者 |
古川 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30282122)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 膵がんマウスモデル / Dusp6 |
研究実績の概要 |
申請者らは、膵臓がんにおいて不活化が高頻度に認められるDual specificity phosphatase 6 (DUSP6)を見出した。DUSP6はERK特異的な脱リン酸化酵素で、MAPK経路の過剰活性化を防ぐ。前癌病変ではDUSP6が発現しているのに対し、浸潤癌では、DUSP6の発現が低下していた。この事実はDUSP6が前癌病変から浸潤性膵臓がんへの進展において腫瘍抑制因子としてはたらいている可能性を示唆している。本研究では、DUSP66の腫瘍抑制因子としてのはたらきをマウスモデルを用いて、個体レベルで明らかにする。 LSL-KrasG12D;Pdx1-Creマウスは、膵臓の前駆細胞に特異的にCre recombinaseが発現し膵臓にoncogenicな変異型KrasG12Dが発現する。このマウスでは6か月~1年でヒト膵臓がんの前癌病変である膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)に類似した病変 (mPanIN) が観察され、2年ほどで20%程度に膵癌が発生する。本年度は、このマウスと、Dusp6ノックアウトマウスを交配させて、Dusp6 nullの膵臓がん発生モデルマウスを作製した。 週齢30を超える LSL-KrasG12D;Pdx1-Cre;Dusp6(-/-)マウスでは、High-grade PanINおよび浸潤性膵管癌の発生が確認された。対照ではLow-grade PanINのみが認められた。免疫組織化学および生化学解析では幾つかの分子発現との間に有意な相関が認められた。 Dusp6消失はin vivoでKrasG12Dを起点とする膵癌の発生進展を促進することが明らかとなり、DUSP6が膵癌発生進展抑制分子として機能していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスに対する対応のため、マウスの繁殖ができなかった時期があったため
|
今後の研究の推進方策 |
①今後さらに解析対象マウスの数を増やし、経時的な変化を観察する。 ②対象マウスの膵臓から膵管上皮を分離しin vitroで培養する。通常の二次元的培養の他、マトリックス中で培養するオルガノイド培養を行う。サンプルを回収し、immunoblottingにより、MAPK経路シグナル伝達物質のリン酸化を解析する。また網羅的な発現解析(Agilent 社のマウス遺伝子発現解析用マイクロアレイを使用)を行い、Dusp6喪失によるMAPK経路の活性化が、どのようなシグネチャーを示すのか明らかにする。
|