研究実績の概要 |
1)病理組織学的評価:免疫チェックポイントと化学療法との併用療法が適応となることの多い肺扁平上皮癌を主体に検討を進めた。宮城県立がんセンター(MCC)にて外科的に切除された術前未治療の扁平上皮癌30例に対し、免疫組織化学的なPD-L1発現量、ImageJ softwareを用いた核異型パラメータ(Perimeter, Max diameter, Area, Aspect ratio, Solidity, Roundness, 腫瘍細胞100個/症例)について評価を行った。さらに、TCGAに公開されている肺扁平上皮癌95例についても、PD-L1のRNA発現量、病理組織標本の核異型(腫瘍細胞20個/症例)について同様の評価を行った。結果、両者の検討において、核異型の中でも特に核形不整に関連する因子が異常であるほどPD-L1の発現が高いことが明らかとなった。核形不整が高度な場合はPD-L1発現が高く、生検などの小さな検体では、PD-L1陰性であっても核形不整が高度であればheterogeneityによるPD-L1偽陰性の可能性も考慮すべきであることが示された。2)新規治療効果関連因子の同定:続いて、これらの結果を元に、MCC症例30例、TCGA症例95例それぞれをward法によってPD-L1高発現かつ核形不整高度群/PD-L1低発現かつ核形不整軽度群の二群に分類した。MCC症例の各群から3例ずつを選択しNGSによる全エクソーム解析を行い、さらにTCGAでも二群間での遺伝子変異の比較を行った。その結果、いずれの検討においても、PD-L1高発現かつ核形不整高度群ではPLCH1, UGT3A1、GANCの変異が有意に多く見られることが明らかとなった。このうち、TCGAの扁平上皮癌501例全例を用いた検討にてPD-L1のRNA発現量と有意な相関を示すPLCH1に着目し、検討を進めている。
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