研究実績の概要 |
2022年度までに下記の解析を行った。1)病理組織学的評価:宮城県立がんセンター(MCC)にて外科的に切除された術前未治療の扁平上皮癌30例、TCGAに公開されている肺扁平上皮癌95例に対し、免疫組織化学的なPD-L1発現量、ImageJ softwareを用いた核異型パラメータについて評価を行った。結果、核異型の中でも特に核形不整に関連する因子が異常であるほどPD-L1の発現が高いことが明らかとなった。さらに、日常診療で用いられているPD-L1の評価方法とも有意な相関もしくは傾向を示すことが明らかとなり、臨床に資する結果が得られた。核形不整が高度な場合はPD-L1発現が高く、生検などの小さな検体では、PD-L1陰性であっても核形不整が高度であればheterogeneityによるPD-L1偽陰性の可能性も考慮すべきであることが示された。2)新規治療効果関連因子の同定:続いて、これらの結果を元に、MCC症例30例、TCGA症例95例それぞれをward法によってPD-L1高発現かつ核形不整高度群/PD-L1低発現かつ核形不整軽度群の二群に分類した。MCC症例の各群から3例ずつを選択しNGSによる全エクソーム解析を行い、さらにTCGAでも二群間での遺伝子変異の比較を行った。その結果、いずれの検討においても、PD-L1高発現かつ核形不整高度群ではC10orf71,COL14A1の変異が多いことが明らかとなり、これらは予後や治療感受性に有意に関与するという報告がある。そのメカニズムは不明であるが、本研究をきっかけにこれらを解明することによりPD-L1高発現かつ核形不整高度群症例の治療戦略が開ける可能性が期待される。3)非腫瘍性の扁平上皮化生との比較を行うことにより、核形不整のパラメータの絶対値の有用性が示された。2023年度に上記成果がVirchow Archivに採択された。
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