研究課題/領域番号 |
20K07396
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
百瀬 修二 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70360344)
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研究分担者 |
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60239605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Burkitt / DLBCL / lymphoma / MYC / BCL2 / HGBL |
研究実績の概要 |
高悪性度B細胞リンパ腫は現在のところ、MYC,BCL2,BCL6 の分子遺伝学的解析なしには診断が確定しえない疾患単位である。本研究はFISH(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)法に頼らない高悪性度 B 細胞リンパ腫の抽出を試みるものである。令和2年度は組織マイクロアレイ(TMA)を用いて、免疫組織化学的な高悪性度 B 細胞リンパ腫抽出法のための基盤整備を約400例のびまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)群で行った。 全例でFISH検索(MYC, BCL2, BCL6)ならびに免疫組織化学的検索(CD10, BCL6, IRF4/MUM1, MYC, BCL2, 分子A)を行い、多くの因子では終了している。一部、まだ終わっていない因子もあることから、引き続き、残った因子の検索を行い、プロファイルを完成させるとともに全体像の把握を行う。 免疫組織学的な高悪性度B細胞リンパ腫抽出法の重要因子と考えている分子Aの機能も行った。この分子のMYCとの関連を調べるために、高悪性度B細胞リンパ腫とともに、Burkitt lymphoma, DLBCLの細胞株に対してMYCの阻害剤であるJQ1を添加し、その効果を検討した。その結果、MYCの発現抑制を行うと分子Aの発現の亢進がみられ、MYCと分子Aの発現が逆相関することを新たに見出した。さらに免疫染色にて、この分子は一部では核内発現もみられ、既報では細胞質内や核膜で酵素としての機能すると考えられていたが、こうした酵素活性以外に高悪性度B細胞リンパ腫においてあらたな機能を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が所属する施設の大型B細胞リンパ腫約400例の組織マイクロアレイ(TMA)を作成し、MYC, BCL2, BCL6のFISH解析、Hans分類に必要なCD10, BCL6, IRF4/MUM1ならびにMYC, BCL2, Ki67, EBER-ISHおよび分子Aに対する免疫染色を行った。BCL6のFISHや分子Aに対する免疫染色は現在解析中であるが、大半のFISHならびに免疫染色は完了し、現在結果の評価を行っている途中である。これらの結果を踏まえ、臨床情報も併せ、高悪性度B細胞リンパ腫の免疫組織化学的抽出法を確立する予定である。 さらに分子Aの機能に関してはMYCの発現阻害とは逆に、分子Aの発現上昇がみられた。さらに分子Aの機能は細胞質内での酵素と考えれていたが、反応性二次濾胞での染色結果から、核内での発現もみられ、新た機能を有している可能性も考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、FISHの結果とともに、免疫染色および臨床情報を踏まえて、高悪性度B細胞リンパ腫の免疫組織化学的抽出法を詰めていく予定である。 分子Aの機能に関しても興味深い結果が得られたので、種々のB細胞リンパ腫細胞株を用いて、あらたな機能の可能性の模索と解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、コロナ禍による消耗品(PCR関連備品)の納入が遅れ、当該年度交付額の8%ほどが次年度に繰り越された。
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