研究課題
インフルエンザ早期死亡例でみられる死亡原因には、インフルエンザ罹患後早期に発症するインフルエンザ脳症、心筋症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)があるが、これらには宿主の過剰な免疫応答によって引き起こされるサイトカインストームが関連していると考えられている。2019年中国武漢から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が発生後パンデミックとなり1年以上経過した現在でも鎮圧されていない。一方、国内では2020/2021年のインフルエンザの流行はほとんどみられなかった。重症COVID-19ではウイルス性肺炎にARDSを併発する点が、鳥インフルエンザや一部の重症な季節性インフルエンザと類似している。本研究において2020年度はCOVID-19肺炎に併発するARDSで早期に死亡した例を対象として、その剖検組織におけるウイルス感染と致死的炎症・免疫応答について解析し、インフルエンザと比較した。COVID-19は小児や若年例では重症化せず、10日以内に死亡した未治療のCOVID-19剖検11症例の平均年齢は63歳であった。全例に肺炎とARDSの病理像であるびまん性肺胞傷害の滲出期像の特徴である硝子膜の形成が見られ呼吸不全が死因であると考えられた。また血栓がフィブリン血栓が6例に見られた。1例に細菌感染との重複感染もみられた。1例で肺42ヶ所のIL-6、 TNF-α、IFNγ、IP10のmRNAの発現を調べた。肺局所でのサイトカインス発現の増強が、ウイルス性肺炎からARDSを併発したインフルエンザの場合と同様にみられ、IFNγとIP10の発現は、ウイルス量に相関していた。
3: やや遅れている
2019年中国武漢から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が発生後パンデミックとなり1年以上経過した現在でも鎮圧されていない。国内では2020/2021年のインフルエンザの流行はほとんどみられなかったため、新しいインフルエンザ関連死亡例の解析ができなかった。
COVID-19の流行は今後も続くこと、重症COVID-19ではウイルス性肺炎にARDSを併発する点が、鳥インフルエンザや一部の重症な季節性インフルエンザと類似していることから、ARDSを併発する重症呼吸器感染症としてCOVID-19も研究対象に加え、ARDS併発に至る重症因子を解明することとする。インフルエンザ症例に関しては、過去の保存検体を使用し、COVID-19と比較検討する。
2020年度は国内でのインフルエンザの流行が小さく、新しいインフルエンザ関連早期死亡例がなかったため、解析に必要な消耗品代分の研究費が持ち越された。2021年度はパンデミック中のCOVID-19とインフルエンザのARDSの病像の比較解析等に有効に使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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