研究実績の概要 |
1) 本研究開始以前に我々は病理組織学的な壊死もしくは肉腫様分化の存在に基づく新規2段階式病理学的グレード分類を提唱し、この分類が全生存率 (overall survival)と無増悪期間 (Time to Progression; TTP) につき日本も含めグローバルに適用可能かつ再現性の高い有用な分類であることを実証した (Virchows Arch, 476, 409-418, 2020)。最近Mayo clinicのAvulovaらにより核の密集、核異型、壊死、肉腫様分化を指標とした4段階グレード分類が提唱された (Eur Urol, 79, 225-231, 2021)。そこで自験例245例を用いてこの4段階分類の再現性を検討したところ単変量解析でTTPとCSS両者で分離不良で、我々の提唱した2段階式分類の方が有用である結果を得た。ただし症例数不足により多変量解析が行えず十分な事象の証明ができなかったので原著論文でなくLetter to the editorによる途中経過報告とした (Eur Urol. 2021, in press)。 2) 他癌腫で新規分子標的治療薬が国内承認され、嫌色素性腎細胞癌の予後不良群で高発現し新規治療標的となる可能性のある遺伝子Aを公共データベースThe Cancer Genome Atlas (TCGA) を利用したバイオインフォマティクスアプローチにより同定した。TCGAに収載の嫌色素性腎細胞癌ではmRNA発現量と遺伝子座のコピー数との間に有意な相関があった。またmRNA高発現群と遺伝子コピー数増加群はmRNA低発現群、遺伝子コピー数非増加群と比較して有意に予後不良であった。自験例の病理組織を用いて免疫組織化学を施行したところ、肉腫様分化の領域でびまん性強陽性を示すことがわかった。自験例でmRNA発現量とコピー数の解析を進めている。
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