研究実績の概要 |
1) 本研究開始前に我々は組織学的壊死と肉腫様分化の存在に基づく新規2段階式病理学的グレード分類を提唱した (Ohashi R et al. Virch Arch, 2020)。最近Avulovaらにより核の密集、核異型、壊死、肉腫様分化を指標とした4段階グレード分類が提唱された (Avulova S et al. Eur Urol, 2021)。そこで我々は自験例245例を用いてこの4段階分類の再現性を検討したところ単変量解析で予後につき分離不良で、我々の提唱した2段階式分類の方が有用である結果を得た。ただし症例数不足により多変量解析が行えず十分な事象の証明ができなかったので原著でなくLetter to the editorによる中間報告とした (Ohashi R et al. Eur Urol. 2021)。 2) 最近、嫌色素性腎細胞癌と病理像や遺伝子学的特徴が酷似しTSC/mTOR pathwayに体細胞遺伝子変異を有する腫瘍群を嫌色素性腎細胞癌から分けた暫定組織型が提唱されつつある。国際的動向として、嫌色素性腎細胞癌の新たな診断基準が求められる時期に来ているといえる。そこで嫌色素性腎細胞癌と暫定組織型その他鑑別診断および臨床病理学的な問題点に関する原著1本総説6本を発表した (Pathology 2021;53:101-108, Pathologe 2021;42:551-559, Biomedicines 2021;9:1418, Pol J Pathol 2021;72:197-199, Biomedicines 2022;10:322, Histopathology 2022;81:426-438, 診断病理 2023;40:18-31)。さらに、これまでの研究成果により腎腫瘍組織型の国際分類であるWHO分類第5版の執筆委員に選定され2022年7月に出版された。これら出版物により解決されるべき問題点を明確化した上で、嫌色素性腎細胞癌および暫定組織型に相当する日本人症例および欧州症例の臨床病理学的検討・遺伝子学的解析を行い、腫瘍群・暫定組織型毎の臨床病理学的特徴の差や、日常病理診断で簡便に利用可能な病理診断マーカー、予後不良因子について検討を進めている。
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