研究実績の概要 |
ARID1Aはクロマチン再構成因子複合体のDNA結合を受け持つ因子であり、大腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌などの悪性腫瘍で、クロマチン再構成因子ARID1Aの遺伝子変異は腫瘍発生、進行につながるクロマチン再構成メカニズム不全につながることが報告されている。 [Davoli et al.’s list of tumor suppressors ではPTEN, TP53, APCに次ぐ第4番目に重要な腫瘍抑制因子としてARID1Aは位置づけられている。T. Davoli et al, Cell 155] ARID1Aは約250kDaの比較的大型のタンパク質であり、機能ドメイン(AT-rich interacting domainと制御モチーフ(LXXLLモチーフ領域を含む)が、散在しており、がん細胞での発現低下を補う外来性の遺伝子導入、機能物質発現あるいは、その機能を行う小分子薬剤の開発は困難である。したがって、ARID1A発現低下により活性化されるがん進行メカニズムの分子経路を解明し、その抑制方法を開発する必要がある。 本研究で、申請者は大腸癌および乳癌など、metabolic diseaseで発がん危険性が、高まる悪性腫瘍において、ARID1A遺伝子欠損、および、その機能不全が、もたらす分子メカニズムについて、分子病理学的、および臨床病理学的な検討を行った。その結果、ARID1A発現低下が、adiponectin-Tcadherin経路を障害し、がん進行をもたらしていることを見出した。 現在、ARID1A発現低下癌に対して、高分子adiponectinを、その受容体なしで、導入できる方法を検討している。
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