研究課題/領域番号 |
20K07409
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高澤 啓 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00593021)
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研究分担者 |
秋元 太志 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20815435)
青山 智志 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50737781)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮頸部腺がん / エストロゲン / エストロゲン受容体 |
研究実績の概要 |
子宮頸部腺がん(以下、頸部腺がん)は核内エストロゲン受容体(ER)が陰性であることから、エストロゲン非依存性がんとして理解されてきた。我々は、頸部腺がんの手術材料および細胞株で膜型エストロゲン受容体GPR30が高発現し、エストロゲン依存性にタイト結合蛋白質 claudin-1発現を調節して悪性化に関与していることなどを明らかにした(Akimoto et al. Neoplasia, 2018)。本研究では、GPR30を軸にエストロゲンが寄与する悪性化メカニズムを明らかにし、頸部腺がんをエストロゲン依存性がんとして再定義し、新たな治療戦略策定へつなげることを目的とする。その達成のため、頸部腺がんにおいて①エストロゲン関連刺激が腫瘍に及ぼす効果、②多層オミクス解析によりエストロゲン関連刺激の分子メカニズム、③ヒトパピローマウイルス(HPV)感染とGPR30の関連、を明らかにする これまでに、頸部腺癌手術材料を用いた免疫組織化学的検討を行った。頸部腺癌の手術症例に対し、GPR30、ER、p16、EPV E6、HPV E7の免疫染色を行い、陽性強度・面積を評価しスコア化した。HPV E7については、良好な染色性が得られなかったため、以降の検討は行っていない。病理組織学的因子との関連を解析したところ、T因子や病期とGPR30発現との間に有意な関連があった。ERの発現と予後との有意な相関は得られなかった。これらの結果はまとめて論文として報告している。p16、HPV E6の免疫組織化学の結果は、現在評価中である。平行して、頸部腺がん細胞株にエストロゲン、GPR30作動薬を暴露し、それらの細胞で比較プロテオーム解析を行った。エストロゲン、GPR30作動薬で共通して増加するタンパク質を複数同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頸部腺がん手術材料を用いた免疫組織化学的検討では、良好な結果を得られたため、論文として報告ずみである。HPV E7については、複数の抗体で免疫組織化学を行ったが、良好な結果が得られておらず、病理組織学的な検討は行えていない。GPR30高発現株作成のため、FLAGタグしたGPR30発現ベクターを構築した。GPR30の欠損株の作製には難渋している。これまでにCRSPR-Cas9を用いて欠損株の樹立を試みているが、株化には至っていない。現在、KO効率の良いCRSPR-Cas9システムへの更新を進めている。頸部腺がん細胞株にエストロゲン、GPR30作動薬を暴露し、比較プロテオーム解析を行い、両者に共通で増加するタンパク質を複数同定した。
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今後の研究の推進方策 |
GPR30発現抑制実験はレンチウイルスシステムを用いたshRNAの導入により行う予定である。GPR30発現欠損株が得られない場合は、発現抑制株を用いて、増殖能、遊走能、浸潤能などの変化を解析する。発現欠損株が得られたのちは、比較プロテオーム解析、RNAseqなどによる網羅的な解析を行う。HPV E6については、安定高発現株を作成してGPR30やERなどの発現との関連を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症のまん延による緊急事態宣言と在宅勤務により、実験計画に大幅な遅れが生じた。緊急事態宣言解除後、コロナウイルス感染症の広がりを考慮しつつ、実験を行ったが、最終的に次年度使用額が生じることになった。次年度については、本年度実施できなかった実験を合わせて施行する予定である。
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