研究実績の概要 |
子宮頸部腺がん(以下、頸部腺がん)は核内エストロゲン受容体(ER)が陰性であることから、エストロゲン非依存性がんとして理解されてきた。我々は、頸部腺がんの手術材料および細胞株で膜型エストロゲン受容体GPR30が高発現し、エストロゲン依存性にタイト結合蛋白質 claudin-1発現を調節して悪性化に関与していることなどを明らかにした(Akimoto et al. Neoplasia, 2018)。本研究では、GPR30を軸にエストロゲンが寄与する悪性化メカニズムを明らかにし、頸部腺がんをエストロゲン依存性がんとして再定義し、新たな治療戦略策定へつなげることを目的とした。 頸部腺がん手術材料を用いた免疫組織化学的検討では、GPR30、ER、p16、HPV E6、HPV E7の免疫染色を行い、陽性強度・面積を評価しスコア化した。HPV E7については、良好な染色性が得られなかったため、以降の検討は行っていない。病理組織学的因子との関連を解析したところ、GPR30発現とT因子や病期との間には有意な関連があったが、ERの発現と予後との有意な相関は得られなかった。p16, HPV E6の染色態度と病理組織学的因子との間に有意な関連は見られなかった。細胞生物学的検討では、頸部腺がん細胞株にエストロゲン、GPR30作動薬を暴露した比較プロテオーム解析において、エストロゲン、GPR30作動薬で共通して増加するタンパク質を複数同定した。GPR30発現欠損株作製については、複数回、複数細胞株で試みたものの樹立には至っておらず、現在はCRISPR-Cas9 HDR法を採用して試行中である。今後は、GPR30発現欠損株と共に、既に構築済みのFLAGタグ付加GPR30発現ベクターを用いてGPR30高発現株を作製し、表現型解析、各種オミクス解析を実施して分子メカニズム解明を進めていく予定である。
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