CD70陽性がん間質線維芽細胞による大腸癌悪性形質・免疫微小環境制御機構の解析

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K07410
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 稲熊 真悟 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 実験病態病理学教授 (80410786)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 大腸癌 / 癌間質細胞

研究実績の概要

大腸癌手術症270例より大腸癌腫瘍組織アレイを作成し、大腸癌間質線維芽細胞の性状を評価すべく、collagen染色を行った。また、間質におけるaSMA, podoplanin, FAP, desmin, decorinの免疫染色を行った。これらの組織標本をスライドスキャナにて画像化し、ImageJにて、陽性領域を計測した。現在、各染色性と、大腸癌臨床病理学的パラメータ、および患者予後との関連を統計学的に解析し、予後予測モデルの確立を試みている。
また、CD47, SIRPA, CD68, CD163の免疫染色を行い、大腸癌細胞におけるCD47発現が、マクロファージチェックポイントを介して腫瘍細胞の免疫逃避を促進させ、同腫瘍患者の予後を悪化させている可能性を明らかにした(Int J Mol Sci.　7;22(5):2690, 2021)。他に、大腸癌患者の予後良好因子として、PBK(Virchows Arch., doi: 10.1007/s00428-021-03062-0. Online ahead of print.)、PHH3(Pathol Int., doi: 10.1111/pin.13084. Online ahead of print.)も同定した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大腸癌組織アレイや、免疫染色用抗体など、本研究を遂行するにあたり、充分な準備がなされていたことにより、当初の予定通り、研究計画が順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

免疫組織染色より得られた大腸癌間質線維芽細胞の性状と、大腸癌臨床病理学的パラメータ、および患者予後との関連を統計学的に解析していく予定である。
また、次年度は、腫瘍間質に存在する腫瘍浸潤リンパ球の性状に関して、免疫組織学的に検討する予定である。
これらの知見をもとに、最終年度においては、マウス同種移植モデルを確立し、生体内での免疫反応、および治療応用の可能性に関して解析していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

消耗品費の出費が予定よりも少なくて済んだため。

研究成果

• [国際共同研究] National Cancer Institute/NIH(米国)
  • 国名: 米国
  • 外国機関名: National Cancer Institute/NIH
• [雑誌論文] PBK expression predicts favorable survival in colorectal cancer patients. (2021)
  • 著者名/発表者名: Nagano-Matsuo A, Inoue S, Koshino A, Ota A, Nakao K, Komura M, Kato H, Naiki-Ito A, Watanabe K, Nagayasu Y, Hosokawa Y, Takiguchi S, Kasugai K, Kasai K, Inaguma S, Takahashi S.
  • 雑誌名: Virchows Arch. 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1007/s00428-021-03062-0.
  • 査読あり
• [雑誌論文] High phospho-histone H3 expression uniquely predicts favorable survival among four markers of cellular proliferation in colorectal cancer. (2021)
  • 著者名/発表者名: Koshino A, Inoue S, Sugimura-Nagata A, Nishiyama T, Murakami H, Ito H, Riku M, Inoko A, Ebi M, Ogasawara N, Tsuzuki T, Kasugai K, Kasai K, Inaguma S.
  • 雑誌名: Pathol Int. 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1111/pin.13084.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Colorectal Adenocarcinomas Harboring ALK Fusion Genes: A Clinicopathologic and Molecular Genetic Study of 12 Cases and Review of the Literature. (2021)
  • 著者名/発表者名: Lasota J, Inaguma S, Izycka-Swieszewska E, Kaczorowski M, Kolos M, Kopczynski J, Michal M, Milione M, Okon K, Peksa R, Pyzlak M, Rys J, Waloszczyk P, Wejman J, Miettinen M.
  • 雑誌名: Am J Surg Pathol. 巻: 44(9) ページ: 1224-1234
  • DOI: 10.1097/PAS.0000000000001512.
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Expression and Prognostic Significance of CD47-SIRPA Macrophage Checkpoint Molecules in Colorectal Cancer. (2020)
  • 著者名/発表者名: Sugimura-Nagata A, Koshino A, Inoue S, Matsuo-Nagano A, Komura M, Riku M, Ito H, Inoko A, Murakami H, Ebi M, Ogasawara N, Tsuzuki T, Takahashi S, Kasugai K, Kasai K, Inaguma S.
  • 雑誌名: Int J Mol Sci. 巻: 22(5) ページ: 2690
  • DOI: 10.3390/ijms22052690.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 大腸癌細胞におけるPBK発現は大腸癌患者の予後良好因子である (2021)
  • 著者名/発表者名: 長野愛矢、中尾健寿、内木綾、笠井謙次、稲熊真悟、高橋智
  • 学会等名: 日本病理学会