研究実績の概要 |
大腸癌手術症270例より作成した腫瘍組織アレイを用いて、collagen、間質におけるaSMA, podoplanin, FAP, desmin, decorinの免疫染色を行った。これらの組織標本をスライドスキャナにて画像化し、ImageJにて、陽性領域を計測した。各染色性と、患者予後との関連を統計学的に解析したが、予後予測モデルを確立することは困難であると考えられた。 一方で、ミトコンドリアのquality controlを行うといわれているSPATA18発現、およびp53発現を免疫組織学的に解析したところ、SPATA18の発現低下を示す大腸癌は、その発現を保持している腫瘍に比して腫瘍径が有意に大きく、予後が悪いことを明らかにした(Int J Mol Sci. 2022, 23:2753.)。また、p53発現を完全に欠失する大腸癌症例は、有意に予後が悪く、wild-typeパターンでp53発現を示す症例は有意にCDX2発現低下を示し、化学療法に対する反応性が良い可能性が示唆された(Int J Mol Sci. 2022, 23:3252.)。 前年度に大腸がん予後良好因子として同定したPBKは、ヒストンH3をリン酸化し、細胞増殖を促進させる一方で、E-cadherinを安定化させ、大腸癌細胞の浸潤、遊走を抑制することで、良好な予後を規定している可能性を明らかにした(Frontiers in Pharmacology, 2022, 18;12:772926.)。
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