軟部肉腫におけるキナーゼ阻害剤に対する治療抵抗性の分子機構の解明

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20K07415
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80439736)
• 研究分担者: 末原 義之 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (70509405)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 骨軟部腫瘍 / チロシンキナーゼ受容体 / 融合遺伝子 / 分子治療標的 / 分子病理学的解析 / GIST

研究実績の概要

染色体非転座型の肉腫検体から得られたRNAシークエンスデータを解析し、従来は融合遺伝子陰性腫瘍とされてきた肉腫の中に相当数（15%程度）のチロシンキナーゼ受容体を含む融合遺伝子を有するものが存在することを見出した。多くはout-of-frameであったが、一部はin-frame fusionであったことから、融合遺伝子形成に繋がる染色体転座という現象は実際のところかなり多くの肉腫で起こっていることが推察された。これらのチロシンキナーゼ受容体を含む融合遺伝子については、一部について機能解析も行い、腫瘍形成能やチロシンキナーゼ阻害剤による抗腫瘍効果についても確認した。研究成果の一部は国際学術論文として報告した。
また、DNAシークエンスでは融合遺伝子を含むTK異常の検出精度が悪いことが報告されているが、RNAレベルでの遺伝子発現解析によりTK遺伝子異常の１つであるMET ex14 skipping (MET ex14s)を肉腫の一部の組織型で比較的高頻度に見出した。同時に行っている他臓器の悪性腫瘍においても同様であったが、このMET ex14sの場合は免疫染色では必ずしも過剰発現を生じてはおらず、そのスクリーニング法については今後の検討を要することが示唆された（現在学術論文を作成中）。RNAを用いた遺伝子発現解析の方法にもプローブ設定の位置や数について今後修正を加えていく必要性を感じた。
さらにGastrointestinal stromal tumor(GIST)においてもその一部にpan-trkによる免疫染色でタンパク質発現を認めたが融合遺伝子形成はなく、NTRK2の遺伝子過剰発現によるtrkBの過剰発現が起きていること、さらに臨床病理学的には小腸・十二指腸発生のGISTに限局してNTRK2発現がみられることを見出し、研究成果の一部は国際学術論文として報告した。

研究成果

• [雑誌論文] NTRK2 expression in gastrointestinal stromal tumors with a special emphasis on the clinicopathological and prognostic impacts (2024)
  • 著者名/発表者名: Sasa K, Son R, Oguchi A, Ashizawa K, Hasegawa N, Kubota D, Suehara Y, Takagi T, Okubo T, Akaike K, Sugimoto K, Takahashi M, Sakamoto K, Hashimoto T, Mine S, Fukunaga T, Ishijima M, Hayashi T, Yao T, Murakawa Y, Saito T.
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 14 ページ: 768
  • DOI: 10.1038/s41598-024-51211-7
  • 査読あり
• [雑誌論文] Detection of Novel Tyrosine Kinase Fusion Genes as Potential Therapeutic Targets in Bone and Soft Tissue Sarcomas Using DNA/RNA-based Clinical Sequencing (2023)
  • 著者名/発表者名: Hasegawa N, Hayashi T, Niizuma H, Kikuta K, Imanishi J, Endo M, Ikeuchi H, Sasa K, Sano K, Hirabayashi K, Takagi T, Ishijima M, Kato S, Kohsaka S, Saito T, Suehara Y.
  • 雑誌名: Clinical Orthopaedics & Related Research 巻: 482 ページ: 549～563
  • DOI: 10.1097/CORR.0000000000002901
  • 査読あり