研究課題/領域番号 |
20K07417
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (90276709)
|
研究分担者 |
多田 雄一郎 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (70292430)
平井 秀明 東京医科大学, 医学部, 助教 (00770744)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 唾液腺導管癌 / HER2 / AR / 癌免疫微小環境 / 免疫チェックポイント阻害剤 / PD-L1 / CTLA-4 |
研究実績の概要 |
唾液腺導管癌(SDC)は、悪性度の高い希少癌であるが標準的薬物療法は確立されていない。研究代表者はアンドロゲン受容体とHER2が高率に発現するSDCの特性に着目して、切除不能・再発転移SDC患者にアンドロゲン遮断療法と抗HER2療法を施行し、高い奏効率を得た。しかし、これらの治療効果予測因子は明らかになっていない。一方、癌の進展や免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の治療効果予測因子として注目されている癌免疫微小環境についても、本腫瘍では未だ不明である。本研究では約300例のSDCについて分子病理学的解析を行い、予後因子、新規治療の効果予測因子および免疫逃避分子機構の解明とそれらに基づく治療法の確立を目指す。 当該年度では、主にSDCにおける癌免疫微小環境の役割を解析した。PD-1、PD-L1、CTLA-4、CD8、FOXP3、mismach repair (MMR)に対する免疫染色を施行し、それらの染色性について各種マーカーの相互関係や予後を含めた臨床病理学的因子との比較検討をした。Microsatellite instability (MSI)はDNAを用いて解析した。PD-1、CTLA-4、CD8、およびFOXP3の発現率は、各々の間で有意な正の相関が認められた。deficient MMRは9.5%で検出されたが、高頻度MSI症例はなかった。PD-L1(Combined Positive Score: CPS)1以上群、CD8高値群、およびCTLA-4高値群は、臨床病理学的な高悪性度と有意な関連があった。また、PD-L1(CPS)が1%以上群は無増悪生存期間がより短く、CTLA-4高値群は全生存期間・無増悪生存期間が共により短かった。その他の癌微小環境因子と予後との有意な関連性はなかった。本研究成果はSDCに対するICI療法を行う上で重要な基礎的データになり得ると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で申請書に記載した癌免疫微小環境に関する研究内容が概ね終了した。現在、これらの成果を国際誌に英語論文として投稿準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、主に唾液腺導管癌におけるアンドロゲン遮断療法と抗HER2療法の治療効果予測因子の探索に焦点をあて、研究を推進する方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも物品の費用を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。今年度は、研究の更なる推進のため、特に遺伝子解析や免疫組織化学染色に必要な物品を中心に、次年度分として請求した助成金と合わせて使用する方針である。
|