研究課題/領域番号 |
20K07418
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
種田 積子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (40408472)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 巣状糸球体硬化症 / カルシニューリン阻害剤 / 腎臓移植 / コロンビア分類 / etiology / 抗体関連型拒絶 / 再発 / 電顕 |
研究実績の概要 |
(結果1) 移植腎におけるカルシニューリン阻害薬の長期使用と、二次性の巣状糸球体硬化症 (FSGS)の発症との相関を、小血管の慢性毒性の観点から検討した。当院で行われた移植腎生検検体3762例の腎移植片生検のうち、299例(7.9%)に分節性硬化病変が同定された。そのうち、中等度以上のCNI血管毒性のあった症例(CNI-FSGS群)は90例であった。臨床像の特徴として生検までの移植後期間(PTD)が最も長かった。病理学的に球状硬化と間質線維化の割合が最も高かった。NOSとPH 亜型が8割以上を占め、COLとCEL 亜型という活動性病変も少数観察された。電顕的には、NOS亜型では内皮下腔の拡大と滲出性変化が目立つ一方、COL 亜型では係蹄内に泡沫細胞浸潤、内皮下浮腫・内皮腫大がみられた。いずれの亜型も足細胞傷害は軽度であった。また、25%の症例で糸球体腎炎の併存が認められた。糸球体腎炎はIgA腎症が最も多く観察され、56%がIgA腎症の再発であった。 (結果2) 他の成因より生じたFSGS群[再発FSGS群(45例)、および抗体関連型(ABMR)‐FSGS症例群(28例)]と比較した。各々はCNI-FSGS群と比べ、異なった臨床像を示した。さらに病理学的には、再発FSGS群では、COL変型の発生率が他の群と比較して最も高く、電顕では、足細胞傷害が高度であった。ABMR-FSGS群では、CELバリアントの割合が他の群に比べ有意に高く、加えて係蹄内に泡沫細胞以外の炎症細胞の数が圧倒的に多かった。電顕的に内皮腫脹などの内皮細胞傷害は重篤であったが、足突起は比較的保存され、足細胞の変性は軽度であった 以上より、移植後のFSGSは形態学的に1次性FSGSと区別することが難しいが、組織学的背景因子から成因別に分類するとその臨床病理学的特徴は異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に問題なく進行している。
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今後の研究の推進方策 |
移植腎におけるカルシニューリン阻害薬(CNI)の長期使用により生じた血管毒性由来の二次性の巣状糸球体硬化症 (FSGS)の臨床病理学的な特徴を抽出できた。さらに、CNI-FSGSと他のetiologyによるFSGS(再発-FSGS群、ABMR-FSGS群)との検討も試み、各群に特徴的な臨床病理学的な像が得られた。現在は、Image Jを用いて、内皮細胞傷害と上皮細胞傷害像を定量的に評価している。内皮細胞傷害は糸球体基底膜の内皮下浮腫像で評価し、上皮細胞傷害は、足突起消失の程度と剥離の程度で評価を行う。今後のステップとして、上皮細胞障害と内皮細胞傷害の蛋白消失・減弱を免疫染色により確認するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画よりも経費の節約ができたため。 巣状分節性糸球体硬化症の病変評価として、当初計画の電顕写真を用いた定量評価に加え、繰り越し金の追加配分により、糸球体内皮細胞と足細胞の蛋白レベルの変化を免疫組織学的手法を用いて解析を追加で行う。これにより、CNI-FSGS群の内皮細胞傷害の程度を単一の糸球体レベルでなく、多数の(標本に乗っている糸球体数)糸球体での評価が可能となる。
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