移植腎における巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の臨床病理学的特徴に及ぼすカルシニューリン阻害剤(CNI)の影響を明らかにするため、病理学的にFSGSと診断された症例を他の病因群(再発性FSGS群、抗体関連型拒絶(ABMR)-FSGS群、その他(UE)-FSGS群)と比較検討した。CNI-FSGS群では、球状硬化率が最も高く、動脈硬化の程度は最も進行していた。約8割がNOS亜型で、電顕上、滲出性変化を伴う顕著な内皮傷害に、局所的に足胞障害が観察された。おもしろいことに、6.7%の症例は、上皮細胞の増生の強いCOL亜型を示し、電顕では、糸球体の上皮細胞増殖と係蹄の虚脱と、内皮細胞障害(係蹄二重化、内皮細胞の腫大)が観察された。一方、再発FSGS群でも、COL 亜型が多くみられた。とくに、高度蛋白尿(UP≧3)症例に限定すると、COL 亜型の割合がさらに高くなり(約80%)、透析再導入もCOL型が他の型より多かった。電顕では、上皮細胞の増殖が認められ、ボウマン嚢と糸球体房の間に橋が形成されていた。ただし、増殖した細胞の足突起は消失していたが、上皮細胞の基部にはアクチンフィラメントの凝集は検出されず、これらはボウマン嚢上皮による増生と思われた。上皮の増生機序が、同じCOL亜型でもCNI-FSGS群と再発群では異なり、再発群では内皮傷害像が非常に軽かった。ABMR-FSGS群では、炎症性変化とCEL亜型が最も多く、CNI-FSGS群とは全く異なっていた。UE-FSGS群は、CNI-FSGS群同様に間質線維化が高度で、NOS亜型が多かったが、CNI-FSGS群と異なり動脈硬化は最も軽かった。さらに、UE-FSGS群では、背景疾患に他の糸球体腎炎、T細胞性拒絶、逆流性腎症が併存し、進行した間質性線維症を背景にNOS亜型を呈したと考えられ、CNI-FSGS群と異なる機序が推測された。
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