研究課題
悪性中皮腫はアスベスト曝露に起因して発生する難治性腫瘍であり、最初の症候は胸水貯留である。最近、胸部CTで胸膜に有意な所見を認めなくても胸水細胞診で中皮腫を否定できない場合には積極的に胸膜生検が行われ、異型中皮細胞の増殖が胸膜の表面や浅層に留まる症例が見出されている。早期中皮腫の発生におけるゲノム異常の解明を目指し、胸部CTで胸水貯留と僅かな胸膜肥厚を除けば有意な所見を認めず、FDG-PETでも有意な取り込み像を認めないレントゲン的T0(8例)を対象にして、胸水セルブロックおよび胸膜生検の組織を用いてBAP1免疫染色とMTAP免疫染色(CDKN2A-FISHの代替え法)を行った。2例はBAP1 loss単独、1例はMTAP loss単独、4例はBAP1とMTAPが共にlossしていた。残りの1例はBAP1とMTAPの発現が維持されていたが、胸膜生検で組織学的に中皮腫と診断された。組織型は全て上皮型中皮腫であり、胸水セルブロックの染色結果は、胸膜組織で増殖する異型中皮細胞の免疫形質と一致していた。更に、長期(5年以上)生存した症例について診断時の異型中皮細胞におけるBAP1やMTAPの発現を調べると、BAP1 loss単独の症例やMTAP loss(CDKN2Aホモ接合性欠失)単独の症例が存在した。早期中皮腫の発生には、BAP1変異(BAP1 loss)を起点とするもの、CDKN2Aホモ接合性欠失(MTAP loss)を起点とするもの、BAP1およびCDKN2A(MTAP loss)以外のゲノム異常を起点とするものが存在すると考えられる。
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