研究実績の概要 |
経発達障害患者の遺伝子解析よりCaMK2βのP213L変異が同定され、同様な変異を導入したCaMK2β_P213L変異マウスを用い、その遺伝子変異よる病態メカニズムの解明を行った。 最初に、CaMK2β_P213L変異の患者が示す運動機能障害はモデルマウスにおいても認められ、小脳におけるCaMK2βの機能不全が原因であることを明らかにし、1つの研究成果として論文発表を行った(Mutoh, J Neurosci Res, 2022)。 さらなる病態・機能解析によりCaMK2β_P213L変異モデルマウスは、覚醒下安静時に異常脳波を示すことが判明した。この異常脳波は、一過性でなく持続的に記録され、野生型で見られない異常なピーク(20~40Hz)を示した。また、GABAA受容体の活動を増強する抗発作薬ジアゼパム、イソフルラン、バルプロ酸の投与により、異常脳波は消失した。さらに、けいれん誘発剤であるペンチレンテトラゾール(GABAA受容体の阻害剤)により異常な脳波ピークは低周波数にシフトし、また、モデルマウスにおけるGABAA受容体抑制誘発けいれん発作閾値(てんかん感受性)が増強されていた。特にCaMK2β_P213L Homoノックインマウスは、強直間代発作を生じ死亡した。 本研究課題において、CaMK2β_P213L変異は機能不全を生じることにより、てんかん、運動機能障害などの神経発達障害を生じていることをモデルマウスの機能解析で明らかにした。
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