非常に強力ながん免疫療法の開発により、進行がんであっても完治を目指すことの出来る新時代を迎えたが、治療による副作用も強力になっており、その最たるものは、サイトカイン放出症候群(Cytokine ReleaseSyndrome; CRS)と呼ばれるもので、しばしば致死的となる。その病態把握や治療は、動物実験モデルでの詳細な検討が必要であるが、現時点では、重度の免疫不全マウスを用いたモデルでの検討しか存在しない。我々は、がん免疫療法の効果増強の基礎的検討過程において、偶然にも免疫不全マウスでは無く、正常免疫マウスでのがん免疫療法によるCRS自然発症と思われる動物実験モデルを発見した。 がん免疫療法によるCRS自然発症動物実験モデルは、Balb/cマウスにColon26マウス大腸癌細胞株を皮下移植し、マウス脾臓より分離したNK細胞を2回腫瘍局所投与することで発症するモデルであり、2回投与による致死率はほぼ80~100%であった。 2回投与後の致死に至るまでに摘出した各種臓器(脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓)についてHE染色による検討を行ったが、各臓器には著明な炎症細胞浸潤や、臓器の著明な損傷所見は認めなかったため、このモデルにおける致死に至る原因として、NK細胞投与に伴う各種免疫細胞の相互作用などによるサイトカインなどの関連が示唆された。 サイトカインの検討について、各臓器摘出と同時に2回投与後の致死に至るまでの間に採取した血清をマルチプレックスにて測定を行い、現在解析を進めている。 その結果を踏まえ、病態の把握を務め、主要なサイトカインに対する抑制実験などを検討していく。
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