研究課題/領域番号 |
20K07428
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
早川 国宏 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (00573007)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 環境要因 / 自己免疫疾患 / 免疫寛容 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
私たちは、普段の生活で様々な環境要因に曝されている。こうした環境要因はアレルギー疾患のみならず、自己免疫疾患の発症や病態に影響を及ぼすことが示唆されている。本研究では、環境要因によって変化する腸内細菌叢が、どのようにして自己免疫応答の活性化に寄与するかを明らかにすることを目的としている。このような外来成分が起点となり、内因成分に対する過剰応答によって疾患を発症する機序を明らかにすることで、様々な免疫疾患への新たな予防・治療戦略の提唱が期待できる。 本研究では、主に環境要因による慢性的なTLR7シグナルの活性化を想定し、これによる腸内細菌叢変化が自己免疫応答へもたらす影響を検証している。2021年度に得られた知見を以下に示す。 これまでに、慢性的なTLR7シグナルの活性化が、腸内環境を変化させることを明らかにしている。さらに詳細な解析を行うため、糞便中微生物メタゲノム解析を行った結果、α多様性の変化、特に菌叢の均等さがTLR7シグナルの活性化によって失われることが示唆された。また、Lachnospiraceae科、Ruminococcaceae科の減少、Lactobacillaceae科の増加が顕著だった。 過去の報告で、広域スペクトル抗生剤の使用で自己免疫応答が減弱することから、腸内細菌叢の自己免疫応答への関与が示唆されている。したがって、腸内細菌叢が変化することは、自己免疫応答の安定化に寄与する可能性がある。そこで、腸内環境の変化の時期における免疫応答の変化を検証するため、脾臓のリンパ球解析を行った。RNA-seq解析で網羅的に遺伝子発現の変化を確認し、ジーンオントロジー解析を行った。その結果TLR7アゴニスト曝露群では顕著な細胞の活性化 (接着、移動、傷害活性) を示す遺伝子群の濃縮が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TLR7アゴニストの曝露によって変動する腸内細菌叢を、メタゲノム解析を行い抽出した。また、リンパ球のRNA-seq解析を進めており、予定通り、バクテリアおよびリンパ球の活性化様式からリンパ球活性化物質の同定を試みる体制が構築できた。
|
今後の研究の推進方策 |
TLR7アゴニストを長期的に曝露することで、まず腸内細菌叢の変化が起こり、続いて血中BAFF濃度の顕著な増加が見られたため、腸内細菌叢の変化が自己抗体産生の安定化に寄与することが示唆された。したがって、BAFF産生に寄与する菌叢および免疫細胞の活性化機序を明らかにする。特にTLR7アゴニストを慢性的に曝露することで各種CD4陽性のヘルパーT細胞の活性化が変化するため、菌叢を抗生剤等でコントロールしCD4陽性T細胞の活性化や分化を変化させ、自己抗体産生への影響を検証する。 また、並行してメタゲノム解析及びRNA-seq解析をもとに、自己抗体産生を変化させる菌叢または代謝産物の同定に取り掛かる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会への参加がリモートだったため、旅費を使用しなかった。 今後の見通しも不明瞭だが、旅費として使用しない場合は一般実験試薬等で使用する。
|