研究課題/領域番号 |
20K07431
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岩本 隆司 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (60223426)
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研究分担者 |
喬 善楼 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (00343658)
岩田 悟 中部大学, 実験動物教育研究センター, 助教 (70722891)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロRNA / p38 / ゲノム編集 / miR-143 / MAPキナーゼ |
研究実績の概要 |
我々は心筋特異的にマイクロRNAのmiR-143を強く発現するトランスジェニックマウス(αMHC/miR-143/145 TG)の心臓においてMAPキナーゼp38の発現が低下する事を見出だしている。 そこでマウス受精卵にゲノム編集Crispr/Cas9を用いたp38の3’非翻訳領域(UTR)上のmiR-143の予想される2か所の標的配列aおよびbを欠損したマウス⊿Mup38/3'UTR(a, b)マウスとαMHC/miR-143/145TGを交配して、p38/3'UTRaあるいはbをそれぞれ欠損したαMHC/miR-143/145TG を複数樹立し、発現調節の責任領域を特定する事を試みた。その結果、3'UTR上のある領域がmiR-143による心臓でのp38発現抑制の少なくとも半分の責任領域である事実が判明した。そこで更に残り半分の抑制の責任領域を同定するために、a,bを双方を含む3'UTRの4kb近い領域を欠損した⊿Mup38/3'UTR(c)マウスを複数樹立し、αMHC/miR-143/145TGと交配し、現在までにp38/3'UTRcを欠損したαMHC/miR-143/145TGを複数個体得る事が出来き、現在解析中である。また当初予定していたヒト乳癌細胞に加えてマウス乳癌細胞およびマウス・ヒト白血病細胞にレトロウイルスでmiR-143を導入して種々のトランスフェクタントを樹立し、いくつかの細胞株でp38の発現の低下を確認出来た。一方、pre-miR-143を欠損させた⊿miR-143マウスの作成を試みたが、現在まで個体が得られていない。また、2.8kbのヒトp38の3'UTR領域をマウスと置換したマウスHup38/3'UTRマウスの作成はエレクトロポレーション法では困難でマイクロインジェクターを用いて作成を試みたが、樹立までには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトp38の3'UTR領域2.8kb の領域をマウスと置換したマウスHup38/3'UTRマウスの作成に時間がかかってしまっているのが最も大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度中にHup38/3'UTRマウスの作成に時間を要していたが、装備および技術上の問題点が明らかになったので、2021年度中にHup38/3'UTRマウスを作成出来ると考えている。また、pre-miR-143を欠損させた⊿miR-143マウスの個体が得られていないが、過去の論文からそのマウスは特に健康に異常がないと推測されるので、胎生致死になるとは考えにくい。使う試薬の濃度等の条件を検討して、個体を得られるようにしたい。2021年度中に上記の課題を克服し、miR-143のマウス及びヒトのp38の個体における調節機構を明らかにする。また、樹立したmiR-143細胞株においてmiR-143によるp38とERK5の調節メカニズムの解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初培養細胞での結果を受けて、マウス生体でのmiR-143の癌抑制効果を検討する予定であったが、マウス生体でのアッセイを並行して進めないと期間内に十分なデータが得られなくなると判断した。よって遺伝子改変マウスの作成をより早期に進める必要性が出てきた。そのための、マウスの樹立、維持及び解析に実験試薬および飼育補助員への謝金が必要となり、前倒し請求したため。
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