研究実績の概要 |
本研究は、細菌感染症等において免疫細胞の誘導や活性を強力に制御することで知られているTRP代謝関連酵素およびその代謝産物に着目し、敗血症モデルマウスを用いたTRP代謝の免疫制御に及ぼす効果を明らかにする。さらに、従来の抗菌薬治療に加えて生体側の免疫能を改善させる新規治療戦略を視野に入れた標的因子の同定と、治療効果の期待できる集団を弁別する検査法の確立を主たる目的とした。本年度の実験計画に基づき、以下の知見を得ることができた。 1.大腸菌由来のLPSを野生型およびKMO遺伝子欠損マウスに腹腔内投与(15mg/kg)し、敗血症モデルを作製した。重要なことに野生型マウスと比較し、KMO遺伝子欠損マウスでは、有意に生存率が低下した。 2.LPS投与により、特に障害が強く出る肺臓、肝臓および腎臓を摘出し、KMOの発現・活性およびトリプトファン代謝産物の測定を行った。どの臓器においてもKMOの発現を認めたものの、特に肝臓におけるKMOの経時的変化は顕著であった。また、肝臓のKMOは肝細胞の他、特にF4/80陽性細胞(肝内マクロファージ)で強い発現を認めた。肝臓内のトリプトファン代謝産物の経時的変化を確認したところ、KMOで代謝生成される3‐ヒドロキシキヌレニンの有意な増加を認めた。 3.肝臓内および血清中のサイトカイン(IL-6, IL-1b, TNF-a, IL-10, TGF-b)およびケモカイン量(CCL2, CCL5, CCL25)を測定した。肝臓中および血清中のIL-6量は、野生型と比較しKMO遺伝子欠損マウスで有意に高値であった。 以上の結果から、LPS投与により誘導されるKMOが生体保護に重要な役割を持つことが明らかになった。今後さらなる解析を進める。
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