研究課題/領域番号 |
20K07434
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
萩山 満 近畿大学, 医学部, 講師 (60632718)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 接着分子 / 細胞外切断 / 上皮変性 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病では尿細管間質病変の重篤化が不可逆的な腎機能障害を導くと認識されている。尿細管間質病変は尿細管上皮変性・炎症細胞浸潤・間質線維化より成る。先行研究において、慢性腎臓病では尿細管上皮のIgCAM型接着分子CADM1(cell adhesion molecule 1)の細胞外切断(shedding)が亢進し、CADM1発現が低下することによって、上皮変性・アポトーシスが誘導されることを見出した。 本研究では尿細管上皮におけるCADM1の機能的意義について検討した。生体内において、上皮細胞が単層を維持しながら密に増殖する際、その過程に接着分子などの相互作用が関与する。in vivoを再現した系として、尿細管由来細胞株CNT、腎癌由来細胞株769Pをトランズウェルの半透膜上で極性を持たせて培養しoverconfluentにした。先行研究において我々はCADM1の細胞外認識抗体9D2を作製し、9D2はCADM1の接着を阻害する中和活性を有することを報告した。単層培養系に9D2を添加して、ウエスタンブロットに供したところ、CADM1発現が約5割低下した。TUNEL法に供したところ、CADM1発現低下によって、TUNEL陽性細胞の割合が約10倍増加した。CADM1は上皮細胞の側方細胞膜上に発現し、極性維持に関与するため、9D2によるCADM1発現低下によって、上皮極性が保持できなくなり、アポトーシスが惹起された可能性が示唆された。以上の結果より、尿細管上皮に発現するCADM1は、上皮細胞が密な単層を形成する際、CADM1発現が上昇し、それが細胞生存に寄与することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに慢性腎臓病ではCADM1のsheddingによって産生されるCADM1細胞外断片(CADM1-NTF)は尿中に放出され、尿中CADM1-NTF濃度が高ければ高い程、尿細管間質病変の重篤度と糸球体濾過率(GFR)とがより強く逆相関することを明らかにした。さらに分泌型CADM1-NTFトランスジェニックマウスを作製し、研究を進めている。本年度は尿細管上皮におけるCADM1の機能的意義を検討し、上皮細胞が密な単層を形成する上で、細胞が生存するのに重要であることを明らかにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
尿中CADM1-NTF濃度が高い慢性腎臓病患者の腎組織を集め、CADM1免疫染色を行い、間質中のNTF量をスコア化し、間質病変の重篤度と間質NTF量の相関性を解析する。また、病理標本を用いてNTFが腎皮質間質中のマスト細胞やCD8/CRTAM陽性リンパ球と共局在していないか検証する。トランスジェニックマウスでは、慢性腎障害を引き起こし、間質NTFと尿細管間質病変の相関を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入が本年度にずれ込んだトミー社の遠心機一式を購入した。差額が生じたが、その分がわずかだったため、次年度使用額に加えて試薬等の購入に使用する計画である。
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