研究課題
慢性腎臓病では尿細管上皮変性・炎症細胞浸潤・間質線維化より成る尿細管間質病変が生じ、その重篤化が不可逆的な腎機能障害を導くと認識されているが、本病態の分子機序解明は十分ではない。Cell adhesion molecule 1(CADM1)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜1回貫通型の接着分子であり、上皮極性の維持に寄与する。CADM1は尿細管上皮に発現し、上皮細胞が密な単層を形成する際、CADM1発現が上昇し、細胞が生存する上で重要な役割を果たすことを報告した。機能調節機構のひとつとして、CADM1は細胞外領域が酵素的に切断(shedding)される。慢性腎臓病ではこのCADM1 sheddingが亢進し、全長型のCADM1が減少するとともに細胞内断片(CTF)が細胞内に過剰に蓄積して、上皮変性・アポトーシスが誘導されることを見出した。またCADM1のsheddingによって産生されるCADM1細胞外断片(CADM1-NTF)は尿中に放出される。先行研究において、CADM1細胞外認識抗体を得た。本抗体を用いたELISAを構築し、尿中CADM1-NTFを測定した。尿中CADM1-NTF濃度が高ければ高い程、尿細管間質病変の重篤度と糸球体濾過率(GFR)とがより強く逆相関することを明らかにした。慢性腎臓病の尿細管間質病変は上皮変性・消失とそれを埋める炎症・間質線維化である。CADM1-NTFは尿中だけでなく、皮質間質中にも放出されていると考えられ、分泌型CADM1-NTFトランスジェニックマウスを作製し、慢性腎臓病における尿細管間質中CADM1-NTFと尿細管間質病変との相関について検討した。
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Front Cell Dev Biol
巻: 10 ページ: 945007
10.3389/fcell.2022.945007.