研究課題/領域番号 |
20K07438
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
中島 弘幸 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 助教 (10574064)
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研究分担者 |
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 准教授 (70531391)
中島 正裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 助教 (70738103)
関 修司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 教授 (80531392)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LXR / Desmosterol / Kupffer細胞 / NKT細胞 |
研究実績の概要 |
新たに開発されたSH42は、コレステロール生合成の最終段階の酵素を阻害し、Liver X Receptorを選択的に刺激する中間代謝物 Desmosterolを細胞内に蓄積させることで、強い炎症抑制効果を発揮する。また、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のモデルマウスに投与すると、発症が抑制される結果を得ている。その機序は炎症性マクロファージの肝臓への遊走や活性化を抑制することによる。この研究では、肝臓に特異的に存在するKupffer細胞や、NKT細胞に対する細胞数や機能の変化を明らかにすることを目的としている。通常食を摂取したC57BL6マウスにSH42を投与し、肝臓免疫細胞を抽出してフローサイトメトリーを実施し、細胞数の変化を非投与群と比較した。いずれの細胞群もSH42投与により増加した。Kupffer細胞の機能を評価するために、蛍光標識大腸菌に対する貪食能を比較したところ両者に差は無かった。Kupffer細胞の分画に着目して再検討する必要がある。Kupffer細胞の主要な機能である細菌に対する防御能の向上の有無を明らかにするために、大腸菌や黄色ブドウ球菌をSH42投与群と非投与群にin vivo投与し、生存率を比較する。NKT細胞については、SH42投与群と非投与群に、NKT細胞を特異的に刺激するα-Galactosylceramideを投与し、肝障害の程度や抗腫瘍効果の変化を比較することで、NKT細胞の機能を評価した。SH42投与群では肝障害の抑制効果があることを確認した。今後は抗腫瘍能に対する効果を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SH42投与によりKupffer細胞、NKT細胞いずれも増加することが明らかになっている。Kupffer細胞については細胞数は増加するが、蛍光標識大腸菌を用いた貪食能は大きな差が無いという実験結果を得ている。これは他のLXR刺激物質を用いた、過去の我々の実験結果と異なる点である。このような違いが生じたことについて考察し、新たな手法の開発が必要である。NKT細胞については増加はするものの、機能は抑制されている結果が得られている。NKT細胞を特異的に刺激するα-Galactosylceramideを投与した際の肝障害が軽減しており、炎症性反応を抑制する効果と考えられる。これは過去のLXR欠損マウスを用いた結果と整合性があり、予定通り今後の実験を進める。
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今後の研究の推進方策 |
Kupffer細胞については、その分画に着目して検討を行ってゆきたい。Kupffer細胞には肝固有の前駆細胞から発生してきた分画と、血液中の単球から分化してくる分画の2種類がある。両者は表現系は似ているが、機能はやや異なっており、単球由来の分画の方がより炎症を惹起しやすい。現在の4色展開のフローサイトメトリーではこの二つの分画を精査できないため、8色の展開法を開発している。新しく開発したプロトコルを用いて、再検討を実施する予定である。NKT細胞については腫瘍細胞に対する障害作用をin vitroで評価し、さらにin vivoでの転移実験を行って抗腫瘍能の比較を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で使用したSH42が、予定よりも安価で購入できたため。現在8色展開のフローサイトメトリーのプロトコルを開発したため、そのための抗体購入費として使用する予定である。
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