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2020 年度 実施状況報告書

DNA傷害からみた癌幹細胞性維持機構の違い.glioblastomaをモデルに

研究課題

研究課題/領域番号 20K07442
研究機関弘前大学

研究代表者

黒瀬 顕  弘前大学, 医学研究科, 教授 (70244910)

研究分担者 小川 薫  弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (10815799) [辞退]
鎌滝 章央  弘前大学, 医学研究科, 助教 (60360004)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードDNA double strand break / γH2AX / cell cycle / nuclear pleomorphism / nuclear atypia / stem cell
研究実績の概要

初年度に行ったのは以下の通りである.①glioblastoma(GBM)のうち,よく揃った小型核からなるもの(MS-GBM)と核の多形性の顕著なもの(GC-GBM)の核形態を数量的に表すため形態計測を行ってデータを集積しつつある.これにより核形状の違いを数値として客観的に表す事ができる.②GBMの培養株を増やしtemozolomide(TMZ)によるDNA二本鎖断裂(DSB)を生じやすいもの,生じにくいものの細胞株を調べた.具体的に前者にはA172の他にAM-38やU-251MG,後者にはYKG1の他にYH13, Onda11やU-251MG(KO)が見付かった.③GC-GBMの大型異型核はDSBが高度になった結果,正常核分裂が停止していると考えられるためcyclin Bの発現を病理組織および培養細胞で調べた,A172ではcyclin B発現が高値であり,さらにデータを追加しつつある.④TMZに抵抗性の培養細胞株ではMGMTの発現が高値のものが多いことが判明した(YKG1,Onda11など).またTMZによりDSBを生じやすいものはMGMT発現が低値のものが多かった(A172, AM-38など).⑤MS-GBMとGC-GBMのDSB回避機構の違いについてシスチントランスポーターであるCD44vやxCTの発現を病理組織切片で調べたが両者での違いは現在のところ見付かっていない.幹細胞マーカーのうちOLIG2発現が前者で高く後者で低かった.これには有意差ありと考えられるので更に症例を追加する.nestin, CD133は両者での違いがなかった.podocalyxinはGC-GBMでは小型細胞に陽性を示すものが認められた.⑥GC-GBMは顕著なDSB,OLIG2の低発現,腫瘍境界明瞭である点が特徴であり,GBMの中で独立性を有すると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は,実験室の整備,特に培養設備の整備を新たに行ったため実験開始が遅れた.さらに日常業務である医療,教育,研究のそれぞれのエフォートの分配が医療に多くの時間を取られる結果となった.また予期せぬコロナのパンデミックにより,web教育を採用せざるを得ず,オンデマンド方式での講義の収録に労力を割かれた.学会参加が大幅に減り,新たな情報を仕入れたり情報交換を行う場が極端に減少したことはモチベーションの低下に繋がった.
二年目は短期での目標を設定して個々の計画を実践するとともに,専門家の意見をきき協力を仰いで,確実に遂行したい.

今後の研究の推進方策

①核の形態計測を漸次追加し多数の症例で行う.GBM以外の腫瘍(肺がん,大腸癌等)においても形態計測を行い遺伝子変異情報やDSBの生じやすさと比較する.②MGMT発現が高値でTMZによるDSBが生じにくい細胞株において,MGMT阻害剤を添加した際のTMZ効果を調べる.MGMT阻害剤添加においてもTMZ効果が得られなければMGMT以外の効果的なDNA保護作用があると考えられる.③MS-GBMとGC-GBMのテロメア長を病理組織検体においてQ-FISH法で調べる.前者の方が有意に長い結果となればテロメア活性が核形態を反映すると言える.④核分裂について,対称性分裂に機能しているsemapholin,neoropilin 1,MICAL3の発現の相違を調べる.⑤GC-GBMではDSBが蓄積した結果核分裂が阻害されていると推測され,cyclin等,細胞周期関連タンパクの発現異常や細胞老化関連タンパクの発現について調べ,MS-GBMと比較する.⑥DSBが高度の細胞での細胞増殖能を調べる.培養細胞に一定期間TMZを作用させた後に正常培地に交換し,その後の形態と増殖能(MIB1発現)を調べる.DSBが高度で核形不整が高度の細胞はMIB1は発現したまま実質的増殖能が欠如していることを証明する.⑦以上の研究は,GBM以外の腫瘍(特に肺癌,大腸癌,肝癌のように小型で揃った核が出現するもの,大型で多形性が顕著な核が出現するもの,が認められる腫瘍でも行う.

次年度使用額が生じた理由

当該研究で使用する新鮮血清や抗体,プラスチック器具等に関して,それらの一部は既存のものから消費したため,それらを購入すべき予算にあまりが生じ,次年度以降に効率的に使用する事を意図したため.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] DNA傷害と核異型 (ワークショップ: ゲノム時代における形態学の新たな展開)2020

    • 著者名/発表者名
      黒瀬顕
    • 学会等名
      第52回日本臨床分子形態学会総会・学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 高悪性度グリオーマの病理とゲノム異常2020

    • 著者名/発表者名
      黒瀬顕
    • 学会等名
      第109回日本病理学会総会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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